トルコリラ予想/エルドアン勝利でリラ安定上昇?のわけ

※2018年7月3日内容更新

トルコの行く先を左右するイベントであった先週のトルコ大統領選は、エルドアンの再選という結末を迎えました。

選挙前、当ブログでは、既存勢力の続投を好感で一時的にトルコリラは上昇し、のち内包する数々の問題が重しとなり次第に下げる、という予想をたてていました。

しかし、それに反し、先週のトルコリラはレジスタンスと見られていた24円台に乗せ、それから比較的緩やかに推移しました。これは何が起きているのでしょうか?

エルドアン陣営、および与党のAKP勝利が、現在のトルコにとってどのような意味を持つのか、そしてそこから、2018年のトルコリラ為替レートはどのように推移するのか、を考えます。

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エルドアン勝利、不正がささやれるも…

先週のトルコ大統領選ではエルドアンが得票率53%で勝利しました。これでエルドアン体制の長期政権化が確実となっています。

今回の選挙勝利による再選後の任期は5年間です。ただ、新たな憲法が施行された現在、エルドアンは2023年の時期大統領選へも出馬が可能となっています。

選挙後の一週間は比較的安定して上昇

選挙結果をうけ、ひとまずは、既存勢力の維持という方向を好感し、トルコリラは上昇しました。

先週25日(月)以降のトルコリラの対円レートは、一時は23円45銭近辺まで下げるも、その後安定して上昇、週末にかけてレジスタンスと見られていた24円台に乗せました。

週明け下げるも動きは緩やか

なお、週が明けたきょう、日本時間日中の取引では、トルコリラ円は再び下げ、24円を下抜けて現在は23円80銭近辺で推移しています。

しかし、この日本時間日中は、世界の通貨市場全体で見ると市場参加者の少ない時間帯であり、16:00から深夜にかけてオープンする通貨取引の主戦場・NY市場・ロンドン市場の動き次第では、再び上昇基調に乗る可能性もあります。

「エルドアン再選」の意味

ここで考えるべきは、エルドアン大統領再選、あるいは与党のAKP(MHPと連立)圧勝が誰にどのように受け止められているか、です。

日本では、トルコリラ関連ニュースが潤沢でないため、エルドアン政権に対しても一面的なイメージしか持っていない、という方は多いでしょう。エルドアン氏のイメージと言えば、独裁、不正、人権侵害問題に対する欧米からの糾弾、といったところかもしれません。

しかも、今回の選挙でも、エルドアン陣営は選挙不正をしていた、と、敗戦濃厚となった野党が訴えていました。ニューズウィーク誌の報道によれば、エルドアン陣営による有権者への嫌がらせがあったほか、国内メディアにおける各候補の扱いに格段の違いがあり、エルドアンの対立候補に割かれた放映時間がエルドアンのわずか1/10ほどであったとの情報もあります。

経済成長・安全保障への期待も

とはいえ、エルドアン大統領の53%という得票率は、すべて不正だけで成り立った数字とも言えず、トルコ国民の一定数がエルドアンを支持していることも浮き彫りにしました。

エルドアンの支持者らは、エルドアン政権がトルコの経済成長を実現する強いリーダーシップを握っている、と考えており、また反体制派・クーデター支持派勢力といった安全保障上の「脅威勢力」を抑え込むためにも、エルドアンの力が必要であると考えているようです。

事実、選挙結果直後に大きく取沙汰されていた選挙不正問題について、日が経つごとにニュースで触れられることは少なくなってきました。エルドアン陣営の圧力の可能性もありますが、その一方で、「たとえ不正がなくてもエルドアンは優勢であった」との認識が広がっている、というのが実際のところのようです。

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長期的な成長への道筋は早まった?

先週を再度振り返ると、トルコリラの為替レートは、予想していたよりも穏やかな動きで推移しました。選挙直後のトルコリラ上昇はきわめて短期的な動きで、まもなく下落トレンドに入ると予想していましたが、思ったほどの激しい動きにはならず、このままゆるやかに推移していく可能性があります。

当ブログでは、今後人口ボーナス期の恩恵をいっぱいに受けるであろうトルコが、長期的には大きく経済成長を遂げる、と予想しています。経済成長は一朝一夕ではなりませんが、その間、これからどのような警戒材料が出てくるか注意する必要があります。

エルドアンが狙う利下げの可能性

大きなところでは、エルドアンの金融緩和の可能性は強い警戒が必要です。エルドアンは選挙前から、当選のあかつきにはトルコ中銀により強く関与していく旨を語っており、またエルドアンが国内支持基盤強化のために利下げ(金融緩和)をしたいのはほぼ明白と考えられています。

高インフレに苦しんできたトルコにおいて、トルコ中銀がようやく大幅な利上げを行い17.75%という未曾有の水準を実現した矢先ですが、そこにエルドアンの思惑通りふたたび利下げとなれば、国外からのトルコへの評価は再び不安定化するでしょう。

発言を覆すことも多いエルドアン大統領が、利下げに今後言及しないシナリオも考えられないわけではありませんが、まだまだ油断はできない、というのが実際のところです。

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2018年のトルコリラ円予想(2018/7/3更新)

2018年の予想としては、トルコリラ円はいったん底を打ったのち、最終的には28円周辺まで上げる可能性がある、と見ています。

経済成長のスピード、早まる可能性も

トルコ総選挙結果から一週間が経過したところで、トルコリラ円は23円なかばから24円のレンジで底堅く推移してきました。

今後何らかのリスクでここから下放れ、23円を割り込むことも考えられますが、もともと健全なトルコ経済のファンダメンタルズに加え、エルドアン政権がこの先数年は盤石なものとなったことで、経済成長のスピードは早まる可能性があります。

2018年のトルコリラ運用計画

ただし、運用計画としては積立を推奨します。

トルコ内部のリスク、つまり政治不安や短期的な下げリスクはいくぶん一服しましたが、外部のリスク、つまり米国主導の世界経済から影響を受ける可能性は残っています。新興国通貨として相応の慎重さが求められるという点は、今もなんら変わっていないと言えます。

今は積立には買い場といえるトルコリラですが、あくまで資金には十分な余裕を持って取引するように心がけたいところです。

 

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