米地裁、AT&Tのタイム・ワーナー850億ドル買収を承認

米地裁、AT&Tのタイム・ワーナー850億ドル買収を承認
 6月12日、米連邦地裁は、米通信大手AT&T<T.N>がタイム・ワーナーを850億ドルで買収する計画を承認した。米カリフォルニア州パサデナで2015年1月撮影(2018年 ロイター/Mario Anzuoni)
[ワシントン 12日 ロイター] - 米連邦地裁は12日、米通信大手AT&Tがタイム・ワーナーを850億ドルで買収する計画を承認した。これによりAT&Tは、デジタル広告の展開で先を行くインターネット企業との競争が可能になるほか、新たな収益源が確保できる。買収に当たり連邦地裁は条件を付けていない。
今回の案件は、動画配信大手ネットフリックスやグーグルなど、コンテンツを作成して消費者に直接ネットで販売する企業に押されてきたメディア業界にとっての転機とみられている。
地裁の決定を受け、有料テレビ会社が相次いでテレビ・映画制作会社の買収に乗り出す可能性もある。
司法省は2017年11月、AT&TがディレクTVとタイム・ワーナーの両方を傘下に収めれば、CNNやHBOなどタイム・ワーナーのコンテンツに依存する競合に対して不公平な優位性をAT&Tに与えるとし、買収を阻止するため提訴していた。
一方AT&Tは、タイム・ワーナー買収により、フェイスブックやアルファベット傘下のグーグルなどが既に展開しているデジタル広告でターゲットとなる視聴者のニーズを把握できると主張してきた。
連邦地裁のリチャード・レオン判事は、買収により競争が著しく低下する公算が大きいことを政府は示せなかったと指摘し、判決の執行延期を求めないよう政府に忠告。仮に延期を求めれば「明らかに不当」であり、認められる可能性は低いとした。
規制などに詳しい弁護士のJ.B.ヒートン氏は判事の忠告について「衝撃的だ」とし、「企業は今後、垂直合併を行う自信を強めるだろう」と述べた。
携帯電話市場の成長が停滞し、ケーブルテレビや衛星放送のサービスからモバイル端末などで視聴できるより安価なストリーミングサービスに切り替える消費者が増えるなか、AT&Tなどの通信会社は新たな収益源の確保が必要となっており、コンテンツ制作会社の買収が1つの手段とみられている。
AT&Tの弁護士は、6月20日までに買収を完了する計画だと明らかにした。
同社の弁護士ダニエル・ペトロセリ氏は記者団に対して、裁判所が司法省の訴えを退けたことはまったく驚きではない、とコメントした。
司法省のマカン・デラヒム反トラスト局長は、判事の見解を精査した上で上訴するか判断すると述べた。
トムソン・ロイターのデータによると、今回の案件は、負債も含めた買収額で、世界の通信・メディア・娯楽業界としては過去4番目、全業種では12番目の規模。
引け後の時間外取引でAT&Tは1.3%下落。一方、タイム・ワーナーは5%超上昇した。
メディア大手21世紀フォックスは7%高。同社の大半の資産を巡り、ケーブルテレビ大手コムキャストと娯楽大手ウォルト・ディズニーが買収合戦に突入するとの観測が高まった。コムキャストとディズニーはそれぞれ4.3%安と1.8%安。
TモバイルUSやスプリント、CBS、ディッシュ・ネットワーク、ディスカバリー・コミュニケーションズ、バイアコムなどその他のメディア・通信企業も上昇した。
OC&Cストラテジー・コンサルタンツのシニアドバイザー、メリー・アン・ハルフォード氏は、この夏はメディア企業合併が非常に活発になるとの見方を示した。
*内容を追加して再送します。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab