コラム:米ヘッジファンドは「ドル高」的中、米国債で痛手

コラム:米ヘッジファンドは「ドル高」的中、米国債で痛手
 6月4日、米ヘッジファンドはこのところドル高を見込む投資戦略が利益を上げる一方、10年物米国債では先物の売り持ちを積み増したタイミングで相場が上昇して痛手を食らい、泣き笑いが相半ばしている。写真は2017年5月撮影(2018年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
Jamie McGeever
[ロンドン 4日 ロイター] - 米ヘッジファンドはこのところドル高を見込む投資戦略が利益を上げる一方、10年物米国債では先物の売り持ちを積み増したタイミングで相場が上昇して痛手を食らい、泣き笑いが相半ばしている。
10年債利回りは節目の3%を超え、5月半ばに3.13%と7年ぶりの水準に上昇。多くの投機筋は利回りが上昇一方だと踏んで、10年債先物の売り持ちを膨らませた。
米商品先物取引委員会(CFTC)の最新のデータによると、ヘッジファンドと投機筋の10年債先物の売り持ちは5月29日までの週に11万2440枚増え、過去最高の47万1067枚となった。
問題は売り持ちを増やしたタイミング。イタリアで政局混乱が頂点に達し、イタリアの国債が急落して世界的に安全資産を求める動きが広まり、資金の安全な逃避先の米国、ドイツ、英国の国債は利回りが急低下した。
10年物米国債の利回りはこの日に17ベーシスポイント(bp)と7年ぶりの大幅な低下を記録。利回りは一時2.75%まで下がり、売り持ちを膨らませたヘッジファンドはいずれも足元をすくわれた。
CFTCのデータによると、ヘッジファンドは2年物米国債では先物の買い持ちが6万2892枚と、2016年11月以来の水準に増加していた。
10年債で売り持ちする半面、2年債で買い持ちにして、利回り曲線のスティープ化に賭けていたわけだが、実際には利回り曲線はこの数週間でフラット化が進み、5月31日には曲線の傾きが40bpと、2007年以来の水準まで平坦化した。
5月雇用統計が最も顕著だが、米経済指標は米連邦準備理事会(FRB)が緩やかな利上げ路線を続けると読み取れる内容だ。FRBは12─13日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決め、年内にさらに1回の追加利上げを行うとの予想が一般的となっている。
しかし市場が完全に織り込む年内の利上げはあと2回。投資家は近年、利上げの予想で常にFRBよりも慎重な姿勢を取り、それが正しかったことが明らかになっている。今回はどうだろう。
投機筋は米国債取引では苦戦したが、ドルの取引では幸運に恵まれた。CFTCの最新のデータによると、投機筋によるドルの売り持ちは6週連続で低下し、5カ月ぶりの低水準となった。外為市場でドルは5月22─29日の週に1.5%上昇し、ユーロは約1年ぶりの安値に沈んだ。
ヘッジファンドのドルの売り持ちは現在51億9000万ドルと、4月20日時点の281億8000万ドルから大幅に減少。この急激な売り持ち縮小と同じ時期にドルは約4%も上昇した。
もっとも、為替や金利を手掛けるヘッジファンドの市場環境は引き続き厳しい。バークレイズヘッジのマクロファンド指数は5月に1.67%低下し、年初来では2.99%下げている。
これは9本のファンドの成績の暫定集計だ。しかしヘッジファンド業界全体がこの流れに沿って動いているなら、5月の成績は2010年以降最悪で、マクロファンドの今年の成績は2011年以来、過去20年で2番目のひどい結果になる見通しだ。
*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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