ブログ:タイの「愛しい王子」たち、少年の出家儀式

ブログ:タイの「愛しい王子」たち、少年の出家儀式
4月26日、ビーズや花飾りがあしらわれた金色の日傘が、父親の肩車に乗せられて進む7歳前後の少年たちに影を投げかけている。写真は10歳のDanusorn Sdisaithaworn君。タイのメーホンソーンで4日撮影(2018年 ロイター/Jorge Silva)
[メーホンソーン(タイ) 26日 ロイター] - ビーズや花飾りがあしらわれた金色の日傘が、父親の肩車に乗せられて進む7歳前後の少年たちに影を投げかけている。
まだ短い人生で一番大事なこの日のために、少年たちは蛍光ピンクやグリーンの衣装を身に着け、手の込んだ頭飾りを乗せ、色鮮やかな頬紅と口紅をさしている。タイ北部の国境近くの山あいの町メーホンソーンで、にぎやかな太鼓やシンバル、ゴングの音に合わせて進むのは、50人ほどの少年たちだ。
これは、少年たちが出家して仏門に入るための儀式。少数民族シャン族が年に1度行うお祭りのハイライトだ。シャン族は、主に隣国ミャンマーに住むが、中国やラオス、タイにも居住している。
「幸せな気持ちで一杯だ。儀式に興奮している」と、タイの貿易商Kasen Kongtuiさん(58)は言う。今回の儀式に参加するミャンマーに住む家族の友人Poo Sit君(12)のために、おカネを出したという。
この名誉ある儀式に息子を参加させるためなら、親は長年の節約生活もいとわない。親戚から寄付を集めて資金を調達したり、貧しい家庭は余裕のある親戚に子どもを預けたりすることもある。
ポイサンロンとして知られるこの儀式は、仏教の開祖で、約2600年前に王子の身分に生まれた釈迦の子ども時代を表現している。
王宮の外で死や病を目にした釈迦は、王族の豪奢な暮らしを捨て、聖なる人間として生きたと伝えられている。
息子の出家は、家族に名誉をもたらすと考えられている。祭りは、タイの新年を控えた乾季の1週間を使って行われる。村人も休みのため村に戻り、子ども達の学校も休校になる。
彼らシャン族の「愛しい王子」に捧げられる儀式は、数段階かけて進む。まずは、頭を剃り、剃り落とされた髪を母親が蓮の葉で包んで記念の品とし、香水で沐浴する。
それから少年たちは白い服に身を包み、タナカと呼ばれる植物から採られた黄色い練化粧で、顔や頭に見事な模様を描いてもらう。タナカには魔除けの効果もあると考えられている。
これ以後、祭りが終わるまで、少年たちは「聖なる存在」になったとみなされ、地面に触ったり、自分で歩くことは許されなくなる。
翌日にはパレードが行われ、3日目に少年たちは親戚の家を訪れて家族のために祈りをささげるなど、より瞑想的な段階に入る。
祭りの1週間が終わると、少年たちは学校がない1、2カ月間を寺で生活し、仏教の経典を学ぶ。
「頭を剃ってもらうのが好きだ」と、8歳のオーガスト君は祭りの一番好きな場面を笑顔で説明してくれた。赤と金の衣装をまとい、ピンク色の花とダイヤモンドの飾りをつけた帽子をかぶっている。
「友達がやるのをみて、出家すると決めた。ブッダの代弁者になりたい。良い人間になりたいんだ」
(撮影、文:Jorge Silva)

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