コラム:アップル、中国でヤフーと同じ轍を踏むか

コラム:アップル、中国でヤフーと同じ轍を踏むか
3月28日、米アップルのティム・クック最高経営責任者と、米ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤン氏というタイプの異なる2人を結びつけているのは、中国におけるデータプライバシー保護を巡る問題だ。写真は28日撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)
Jeffrey Goldfarb
[香港 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)と、米ヤフーの共同創業者ジェリー・ヤン氏というタイプの異なる2人を結びつけているのは、中国におけるデータプライバシー保護を巡る問題だ。
アップルは数週間前、中国人ユーザーの「iCloud(アイクラウド)」アカウント運用を中国データセンターに移行した。中国の新法令により、そうしなければサービス停止に追い込まれたからだ。
クックCEOは、こうすることでユーザーにより高い安全性を提供できると判断した。しかし、これは同時に、中国当局がどのような情報提供を要求できるかを、国内法令が決めることを意味する。
人権活動家らは懸念を隠さない。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは22日、ソーシャル・メディア上でアップルに抗議するキャンペーンを開始した。
フェイスブックが陥った最大の情報流出危機が、こうしたリスクの大きさを物語っている。
約5000万人分の個人情報が、政治コンサルタント会社に不正利用されていたことが報じられると、ザッカーバーグCEOが率いるこのソーシャルメディアは、時価総額の約10%にあたる500億ドル超(約6・3兆円)を失った。
ヤフーも、かつて巨大ウェブ企業だった時代に、似たような経験をしている。2004年に同社が中国政府に提供したメールによって、国家機密漏えい罪に問われジャーナリストの師濤(シー・タオ)氏が収監された。ヤフー幹部は2007年、この問題で米議会に呼ばれた。
傍聴席に座った師氏の母親の泣き声が背後に聞こえるなか、ヤン氏とその同僚は、トム・ラントス下院議員の叱責を受けた。「技術的、財務的にはあなたがたは巨人だが、倫理的には小人だ」
ヤン氏らの議会証言のわずか数時間前、ヤフーが中国進出戦略の一環として株式の40%を保有していた中国インターネット通販大手アリババ・ドットコムが香港証券取引所に上場し、同社株価が3倍に急騰したばかりだった。
ヤン氏は当時、中国でビジネスをするには「地元の法律に従わなければならない」と弁解していた。
昨年12月に広州市で開かれた会議で、アップルのクックCEOも似たような発言をしている。「ある国に進出してその市場に参加すれば、その国の法律や規制の対象となる」
もちろん、アップルだけの問題ではない。アマゾンやマイクロソフトなども、中国のルールに従っている。
しかしながら、クックCEOは時価総額8540億ドル(約90兆円)に上る、テクノロジー業界を代表する巨人のかじ取り役だ。
同CEOはまた、殺人容疑者の所持品とみられるiPhone(アイフォーン)のロック解除を求める米連邦捜査局(FBI)の要請を断っている。複雑なニュアンスが含まれるケースだったが、クックCEOはプライバシーの擁護者との評価を受けることになった。
これにより、クックCEOは一層狙われやすい存在になった。アップルとその株主は、逆風に備えるべきだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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