コラム:シュタインホフ債暴落はECB債券購入見直しの好機

コラム:シュタインホフ債暴落はECB債券購入見直しの好機
 12月13日、欧州中央銀行(ECB)が購入していた南アフリカの家具製造・販売大手シュタインホフの社債価格が、不正会計疑惑で暴落した。写真はフランクフルトのECB本部で11月撮影(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)
Neil Unmack
[ロンドン 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)が購入していた南アフリカの家具製造・販売大手シュタインホフの社債価格が、不正会計疑惑で暴落した。ECBはこれを奇貨として、債券購入プログラムを見直すことが可能だろう。
ECBは7月、量的緩和の一環としてシュタインホフ債を購入したが、5カ月後の今月、同社は会計処理上の不正行為で外部調査を実施すると発表し、社債価格は額面の半分近くまで急落した。
ECBは面目を潰されたが、実際に被る損失は極めて少額だろう。ECBはシュタインホフ債の保有額を公表していないが、当局者によると、購入適格条件を満たす社債全体に占める、個々の企業の社債発行残高の割合に応じて購入額を決めている。
ユーロ圏には投資適格級社債が8000億ユーロ近くある中で、シュタインホフ債の発行残高はその0.1%の8億ユーロ。ECBが保有する社債は約1300億ユーロなので、このうちシュタインホフ債は1億3000万ユーロ程度とみられる。仮にこの全額が失われたとしても、ECBが保有する社債の利回りが年率平均1%だとすれば、全体の利息だけで損失額の10倍に達し、損失を補って余りある。
とはいえ、今回の騒動は中央銀行のような公的組織が企業向け与信に手を出すことの危険性を浮き彫りにした。ディストレスト債の査定や、破綻処理への関与には特別な専門性を要する。しかも、多少なりとも損失を出せば債券買い入れを批判する政治家にとって格好の攻撃材料になるだろう。
理想を言えば、ECBは社債を一切買わない方が良さそうだ。だが、ユーロ圏の規則ではECBが買えるソブリン債の額は制限されている。
格付けが最高位部類の企業といえども、苦境に陥ることはある。しかしECBが危ない企業への投資を制限する方法は少なくとも1つある。現在の規則では、シュタインホフのように、少なくとも格付け機関1社から投資適格級の格付けを得ていれば、ECBは社債を購入できる。しかし多くの投資家は、1社では心もとないため、2社以上による投資適格級付与を購入条件としている。
シティグループの推計では、ECBの担保適格条件を満たす社債のうち、格付け機関1社だけから投資適格級の中で最低の「BBBマイナス」格付けを得ているものは280億ユーロある。手始めにこれらを除外しても、ECBが買える社債はなお7500億ユーロ残ることになる。
●背景となるニュース
*ECBの統計によると、ECBはシュタインホフの不正会計疑惑が浮上した後も、2025年償還の同社債を保有し続けている。
*同社は5日、不正会計の調査に監査法人を起用したと発表し、同社債は暴落した。Eikon(アイコン)によると、現在は額面の50%強で取引されている。
*ECBは1300億ユーロの債券購入プログラムの一環として、同社債を7月に買い入れたが、その額は公表していない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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