コラム:ムーディーズが予想外のインド格上げ、改革を後押し
Una Galani
[ムンバイ 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - インドのモディ首相に絶好のタイミングで追い風が吹いた。ムーディーズ・インベスターズ・サービスが17日、予想外の格付け引き上げに動いたのだ。格上げは2004年以降で初めて。重要な州議会選挙と総選挙を控える与党・インド人民党(BJP)が政策の成果を強調する材料になるだろう。
格付けは1段階上がって「Baa2」。投資適格級の下から2番目で、イタリアと同等になった。インドネシアよりは1つ上だ。1社の格付けがわずかに改善しても、インドの資金調達コストが下がったり、投資家層が拡大する公算は小さい。だが格上げは、モディ政権の大胆な改革が最近の混乱にもかかわらず、適切な軌道を進んでいることを認めたものだ。
モディ氏は2014年の就任以降、経済に対して苦い薬を処方し続けた。新たな不動産規制や高額紙幣廃止、どたばたの中で導入した物品・サービス税などの影響で、第2・四半期の成長率は5.7%に下振れした。しかし世界銀行のビジネス環境ランキングで一気に30位近く躍進したことに続く今回の格上げは、これらの措置によって税収増と経済の効率性向上への土台が整えられた様子がうかがえる。
一方でどこから見ても経済にプラスの働きがあり、今後もインドの資本コストを引き下げてくれる改革もある。それは新たな破産手続き制度や、民間投資が上向く際に融資を容易にできるようにするための国営銀行の立て直し策などだ。
インドの対外的なショックへの脆弱性もずっと低下している。外貨準備高は過去最高水準にあり、5年前は国内総生産(GDP)比で約5%だった経常赤字は、今年度末には同2%前後に収まる可能性がある。そうなると原油価格が上がっても、ある程度衝撃は和らげられる。
もっとも目先を見ると、それほど明るくはない。大きな不透明要素の1つは、モディ政権が財政赤字縮小を続け、債務債務を管理可能な水準に維持する意思がどれだけあるかだ。今後思い切った歳出削減か、国有資産売却の加速がない限り、インドの財政赤字は既に政府目標の対GDP比3.2%に達してしまったように見える。そして政治家は有権者の歓心を買うために来年歳出を増やしたいと考えるだろう。
このためS&Pグローバル・レーティングスとフィッチは、追随して格付けを引き上げるかどうかもう少し事態を見守ろうとするかもしれない。とはいえムーディーズの動きは、モディ政権による改革継続の背中を押してくれそうだ。
●背景となるニュース
*ムーディーズは17日、インドの格付けを投資適格級で下から2番目に引き上げた。格上げは2004年以降で初めて。
*インドの外貨建ておよび自国通貨建ての債務は「Baa2」に引き上げられ、格付け見通しは「ポジティブ」から「安定的」に変更された。
*ムーディーズによると、2018年3月までの年度のインドの実質国内総生産(GDP)成長率は前年度の7.1%から6.7%に減速する見通しだ。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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