コラム:セクハラ騒動、企業経営を脅かすリスクに
Jennifer Saba
[ニューヨーク 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - セクハラが企業経営を揺さぶるほどのテーマに発展しつつある。米ハリウッド映画界の大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏が経営する映画スタジオは瓦解状態に陥り、巨大企業アマゾン・ドット・コムは幹部のセクハラ疑惑と格闘中。セクハラは人事案件にとどまらず、経営上層部も関心を払うべき重大な事業上のリスクに躍り出た。
女性に対するセクハラと聞いて1960年代、70年代の遺物だと思うなら、ハッシュタグ「#MeToo(私も)」を付けた書き込みをのぞいてみるといい。セクハラや暴行の被害を訴える人々により、このタグはツイッター上だけでも50万回以上使われた。
この潮流は、あらゆる企業の取締役会を震え上がらせている。ワインスタイン・カンパニーの取締役と経営幹部らは今、創業者自らが失墜させた信用を取り戻そうと、身売りを検討している。社名の変更は必須だろう。
アマゾンでは、映画・テレビ部門アマゾン・スタジオのトップ、ロイ・プライス氏が、女性プロデューサーにセクハラを告発されて辞任した。
影響は一部の幹部にとどまらない。訴訟が急増するだろうし、売上高も脅かされる。例えばアマゾンは既に、ロバート・デニーロさんとジュリアン・ムーアさんが出演するドラマをワインスタイン・カンパニーと共同制作する計画を中止した。他社やこのビジネスに関わる監督やプロデューサー、俳優も追随する可能性がある。
映画ファンも、ワインスタイン氏関連の作品をボイコットするかもしれない。抗議行動はどんな企業とも無縁ではない。米配車大手ウーバーは先に、カラニック前最高経営責任者(CEO)の下で培われたセクハラ・いじめ文化が明るみに出て、ハッシュタグ「#DeleteUber(ウーバーのアカウントを削除しよう)」を使った抗議運動に直面した。
企業買収にさえ影響は及び得る。英政府は7月、米メディア大手21世紀フォックスによる英有料テレビ大手スカイの買収を審査する際、21世紀フォックス子会社のフォックス・ニュース幹部とキャスターによるセクハラ疑惑を検証するよう英議員から要請された。政府はその後、この買収に待ったをかけている。
職員を尊重する職場環境を確保できないことは、取締役会と経営幹部が憂慮してしかるべき問題だ。しかし残念ながら、彼らが腰を上げるのは収益が脅かされそうになってからなのかもしれない。
●背景となるニュース
*映画・テレビ部門アマゾン・スタジオのトップ、ロイ・プライス氏は17日、プロデューサーに対するセクハラ疑惑で辞任した。
*ワインスタイン・カンパニーは、セクハラ疑惑の渦中にある創設者で大物プロデューサー、ハービー・ワインスタイン前CEOを更迭した後、大半の資産を投資会社コロニー・キャピタルに売却する交渉に入った。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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