神戸鋼株対象EBでノックイン発生、検査データ改ざんによる株価急落で

神戸鋼株対象EBでノックイン発生、検査データ改ざんによる株価急落で
 10月12日、今年夏に売り出された神戸製鋼所<5406.T>株対象の他社株転換条項付円建て債券(EB)が、発行後1カ月でノックイン事由の発生に至った。写真は都内で10日撮影(2017年 ロイター/Issei Kato)
[東京 12日 ロイター] - 今年夏に売り出された神戸製鋼所<5406.T>株対象の他社株転換条項付円建て債券(EB)が、発行後1カ月でノックイン事由の発生に至った。アルミ・銅製品の検査データ改ざん問題を受け株価が急落したため。売り出し期間は神戸鋼が問題を把握した時期と重なっていただけに「発行のタイミングがあまりにも悪すぎる」(国内証券)との声が出ている。
第四証券(新潟県長岡市)が8月28日から9月8日の間に売り出した神戸鋼株対象EB(期限前償還条項付・デジタル型・ノックイン条項付)は、発行体がフィンランド地方金融公社。満期償還日は2019年3月11日となっている。
受け渡し日の17年9月11日から3カ月ごとに6回、利払日が設定されており、利率は当初3カ月は年7.00%(税引き前、3カ月後は株価が利率判定価格を下回った場合0.50%)。売出額は5億円。第四証券のホームページによると完売したという。
設定された期間中に一度でも株価がノックイン価格を下回った場合、最終評価日に株価が転換価格未満であれば、株式に転換される(または現金調整額で返還される)仕組み。利率は高いが、株式転換時に含み損を抱えるなどのリスクも高い金融商品だ。
ノックイン型EBそのものは今回の神戸鋼に限らず、様々な銘柄を対象にしたものが個人投資家などに販売されている。10月11日にも海外金融機関が発行体となり、MonotaRO<3064.T>やアドバンテスト<6857.T>などを対象株式としたノックイン型EBがローンチされている。
第四証券が扱ったEBの場合、ノックイン価格は神戸鋼株の9月11日終値(1333円)を25%下回る999円。アルミ・銅製品などの検査データ改ざんが発覚する前の10月6日の同社株の終値は1368円だった。8日の同社の発表を経て、株価は同11日まで878円まで急落。発行後わずか1カ月でノックイン価格を下回った。足元の株価は転換価格1333円を3割以上、下回る水準だ。
日本経済新聞によると、神戸鋼の経営陣がデータ改ざん問題を巡り、現場の管理職から報告を受けたのは8月30日。公表まで1カ月以上の時間を要した。「投資するかどうかは自己責任だが、売り出し期間中に神戸鋼が何らかのアナウンスメントを行っていれば、販売中止の可能性もあったかもしれない」(別の国内証券)との見方も出ている。

長田善行 編集:伊賀大記

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