生産性向上の物価への波及、見通し期間の後半を想定=中曽日銀副総裁

生産性向上の物価への波及、見通し期間の後半を想定=中曽日銀副総裁
 7月26日、日銀の中曽宏副総裁は、企業の労働生産性向上に向けた取り組みが物価上昇につながるタイミングについて、7月の展望リポートで示した2019年度までの見通し期間の後半になるとの見方を示した。日銀本店で2015年撮影(2017年 ロイター/Yuya Shino)
[広島市 26日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁は26日、広島市内で会見し、企業の労働生産性向上に向けた取り組みが物価上昇につながるタイミングについて、7月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で示した2019年度までの見通し期間の後半になるとの見方を示した。
日銀は同リポートで目標とする物価2%の到達時期を「19年度ごろ」に先送りしたが、度重なる先送りへの批判を率直に受け止める、と語った。
中曽副総裁は、景気が拡大し、労働需給の引き締まりが続いているにもかかわらず物価上昇が鈍い背景について、企業が人手不足に対応するために、1)省力化・効率化投資、2)労働節約的なビジネス・プロセスの見直し、3)既存の人的資源の有効活用──に取り組み、労働生産性を向上させている点をあらためて指摘した。
もっとも、こうした対応には限界があるとし、「追及され尽くされる段階で、企業の賃金・価格設定スタンスが積極化してくる」と主張。さらに、労働生産性の向上によって潜在成長率が押し上げられ、「企業の成長期待が上昇する、あるいは恒常所得が増加する。こうしたことを通じて、設備投資や個人消費が活発化して需要を押し上げる効果もある」と語った。
そのうえで、物価上昇に波及するタイミングは「政府による構造政策と金融政策がしっかりとかみ合うことが前提」としながら、自身としては労働生産性の伸びをやや高めに想定しているとし、「見通し期間の後半には、こうした力(物価上昇圧力)が強まってくると思っている」との見方を示した。
7月の展望リポートでは、物価2%の到達時期をそれまでの「18年度ごろ」から1年先送りした。13年4月の黒田東彦総裁の就任以降で6回目の先送りとなったが、中曽副総裁は「政策当局として真摯(しんし)に受け止めたい。批判を率直に受け止めたい」と表明。
見通しとのかい離が生じた場合には、「理由をしっかり分析し、分かりやすく説明する」ことの重要性を強調した。
24日、大規模緩和の推進に反対票を投じてきた木内登英氏、佐藤健裕氏に代わり、リフレ派の論客である片岡剛士氏とメガバンク出身の鈴木人司氏が新たな審議委員に就任した。
市場では、「野党的な委員」の退任によって政策議論が低調になることを懸念する声もあるが、中曽副総裁は、反対票の有無によって「政策委員会の議論の多様性が失われることはない」と反論した。

伊藤純夫

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