コラム:FBとグーグルに挑む米新聞業界の「戦術ミス」

コラム:FBとグーグルに挑む米新聞業界の「戦術ミス」
7月10日、米紙ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズらは、インターネット交流サイト(SNS)大手フェイスブックや検索大手グーグルとの戦いにおいて、誤った戦術を追及しつつある。写真は2月、ニューヨーク市の地下鉄で新聞を読む人たち(2017年ロイター/Carlo Allegri)
Jennifer Saba
[ニューヨーク 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米紙ウォールストリート・ジャーナルやニューヨーク・タイムズらは、インターネット交流サイト(SNS)大手フェイスブックやアルファベット傘下の検索大手グーグルとの戦いにおいて、誤った戦術を追及しつつある。
両紙を含めた2000を超える出版社や新聞社が加盟する米業界団体「ニュース・メディア・アライアンス」は、フェイスブックとグーグルに対して集団交渉を行う権利を米議会に求めた。
確かに、830億ドル(約9兆4700億円)規模のデジタル広告市場を2社が牛耳る現状には、深刻な懸念があるといえる。だが戦うには、幅広い独占禁止法の執行が必要になるだろう。
新聞業界はこのところずっと、デジタルの浸食に悩まされてきた。収益性の高い紙の新聞を購入する読者が減り、業界全体の売上高はこの10年で半減して2016年には300億ドルとなった。
米プライスウォーターハウスクーパース(PwC)によると、新聞業界は今年、デジタル広告で50億ドルを売り上げる見通しだが、これはグーグルとフェイスブックによる売り上げ総計の10分の1でしかない。両社は合わせて、デジタル広告市場の60%を支配している。
このような寡占状態は、トランプ米大統領のどんなツイートよりも報道の自由を大きく脅かすと、同団体のデビッド・チャーバンCEOは語る。
新聞社や出版社は、力を結集することで、同じ土俵の上に立ちたいと考えている。同団体は米議会に対して、新たな読者への課金方法から広告収入の分配まで、さまざまな課題について両社と集団交渉を行うことができるよう、独占禁止法の一時的な例外扱いを認めるよう求めた。
ニュースメディアが弱体化したことは疑いがないが、自らの努力不足も一因だ。新聞は、コミュニティ情報サイトのクレイグスリストが登場するまで、案内広告や情報交換のための投稿を独占していた。地域版や全国版の広告収入が極めて好調だったため、数十年に渡り、出版元は新聞の価格を低く抑え、実質的に無料に近い価格で提供していた。いまや新聞社は、購読料を支払ってもらおうと躍起になっている。
時価総額を合わせると1兆ドルに達するフェイスブックとアルファベットの子会社グーグルが、日常のあらゆる場面に遍在している現状には、穏やかでいられないものがある。米国のインターネット利用者の8割近くが、フェイスブックを使用する。グーグルは、メールや、地図、検索機能を支配している。
店舗評価サイトのイエルプなどの他の多くのサイトや、英WPPなどの広告サイトですら、この2社に対する政府の監督強化によって得るものがあるだろう。
欧州連合(EU)は、それが可能であることを示した。EUの反トラスト当局は6月、グーグルに対し、ショッピングサービスを巡り反競争的な慣行があったとして、24億ユーロ(約3130億円)を超える制裁金を課した。
新聞各社は、独自に楽な結果を求めるよりも、そうしたより伝統的な取り締まりの実践を政府に求めた方が得策だろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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