コラム:米労働市場タイト化で問われるトランプ氏の政策思考
Gina Chon
[ワシントン 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米労働市場のタイト化は、トランプ米大統領が政策を考える際の基本的な理念に異議を唱えることになりそうだ。雇用者数は5月に13万8000人増えたが、予想よりも大幅に少なかった。失業率が4.3%と非常に低いので、雇用増加ペースが減速するのは避けられない。現在の問題の1つは人手不足だ。
ピュー・リサーチ・センターは3月、約820万人のベビーブーマー世代が2035年までに労働市場を去るが、移民によって穴埋めできるのはそのうち60%弱にとどまるとの予測を示した。移民なしでは、米国の生産年齢人口が35年までに1800万人少なくなる見通しだ。だが、トランプ氏は不法入国を減らし、非登録居住者を国外追放する選挙公約を実行している。こうした移民を失望させる政策によって、労働力の縮小はより確実になっていくだろう。
多くのエコノミストは、米国が完全雇用に近いと推測しているだけに、これは重大な意味を持つ。大きな問題点は、金融危機の後に潜在労働力の比率が急激に低下し、底ばいで推移してきたことだ。いわゆる労働参加率は5月に62.7%に下落した。しかし、この潜在的な労働者の一部でも再動員できれば供給を増やせる。
女性は第一の候補となりうる。彼女らの労働参加率は60%でピークを付けた2000年以来、下がり続けてきた。今は57%だ。男性は69%であり、女性が働くよう動機付けることが大きな焦点となる。ギャラップ社の16年の調査によれば、時代遅れの企業の施策や不十分な子育て支援が女性が働かない選択をする要因だ。
ホワイトハウスが推進する医療保険制度改革(オバマケア)代替法案が成立すれば、産科やマンモグラムのような予防サービスを保険でカバーしなくなる事態があり得る。トランプ政権はまた、オバマケアが避妊を保険対象とするよう雇用者に義務付けた措置を終わらせるよう提案している。これらは両方とも女性の求職活動に水を差すことになり得る。
トランプ氏の長女で大統領補佐官を務めるイバンカさんは、新たな子育て減税を働き掛けており、それ自体は正しいことだが、ほぼ富裕層のためになるだけだ。移民を遠ざけ、女性の就業意欲向上に取り組もうとしないことで、トランプ大統領は自身が掲げる雇用創出の目標達成を難しくしている。
●背景となるニュース
*米労働省が6月2日に発表した雇用統計では、5月の非農業雇用者数は13万8000人増加し、失業率は4.3%に低下した。ロイターが調査したエコノミスト予想では、18万5000人の増加が見込まれていた。平均時給は0.04ドル上昇して26.22ドルとなり、前年比2.5%上がった。労働参加率は微減の62.7%だった。雇用の増加は企業向けサービスや外食産業によって主にもたらされた。一方、小売業や政府部門では減少した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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