焦点:対照的な米独首脳、17日の初会談でサプライズあるか

[ベルリン 12日 ロイター] - 緻密で冷静沈着なドイツのメルケル首相と、過激な言動が目立つトランプ米大統領。政治スタイルも主張も大きく違う2人のリーダーの初会談に注目が集まっている。
会談は当初14日にワシントンで行われる予定だったが、現地で大雪予報が出ていることから17日に延期された。
東ドイツ出身で物理学者のメルケル氏は、欧州で最も影響力のある首脳でありながら控えめな物言いが特徴で、熟考のうえ決断を下すスタイルを貫いてきた。一方、不動産王として知られてきたニューヨーク出身のトランプ氏は衝動的に行動するタイプで、脚光を浴びることを好む。
2人のリーダーは、過去数カ月にわたり、政策や価値観を巡り互いの主張を展開してきた。
両首脳が直接会談するのは今回が初めてで、戦後世界の秩序形成に大きな役割を果たした欧米関係の今後を見極めるために世界各国の政府から注目を集めるとみられる。
オバマ前政権で対欧州政策の助言役を務めたチャールズ・カプチャン氏は、「二人が親友になる可能性があるかと言えば、恐らくないだろう。性格が大きく異なる」と指摘。
「ただ、双方ともに政治的にも戦略的にも、どのように協力するかを模索することに強い関心がある。トランプ大統領にとって、ほぼ間違いなく最も重要な2国間首脳会談になるだろう」との見方を示した。
ドイツ政府関係者などによると、緻密なことで知られるメルケル氏(62)は会談に向け周到に準備を進めてきた。
1人の独政府高官は「トランプ氏が長い話を好まず、立場の明確化を望み、詳細な説明は求めないことを踏まえて準備する必要がある」と語った。
<経済・外交政策>
経済・外交政策における両首脳の見解の相違は大きい。
トランプ氏(70)はドイツの難民受け入れ策や防衛予算を批判し、ドイツ車に輸入税を課すと警告してきた。また米国家通商会議のナバロ委員長は、ドイツの対米貿易黒字に関し、ユーロ安で不当に有利な立場を得ていると批判。これに対しメルケル氏などは、ユーロはドイツ政府でなく欧州中央銀行(ECB)の管轄だと反論した。
首脳会談ではロシアも議題にのぼる見込み。ホワイトハウス関係者らは、トランプ氏がプーチン大統領への対応で助言を求めると明らかにした。
一方、メルケル氏はイスラム圏数カ国からの入国を制限する米大統領令に批判的な姿勢を示してきた。1月のトランプ氏との電話会談で、米国を含むジュネーブ条約の締約国は人道的な見地から難民を受け入れることがで義務付けられているとくぎを刺した。
また、トランプ氏が英国の欧州連合(EU)離脱を繰り返し賞賛することで、加盟国の結束に悪影響が及ぶと懸念している。
1月まで米国のEU代表部大使を務めたアンソニー・ガードナー氏は 「欧州は非常に脆弱(ぜいじゃく)で不安定な状況にあり、ドイツは欧州統合に向けた結束を維持するよう働きかけている。トランプ大統領にも、この立場を明確にしたい考えだろう」と指摘した。
ただ、今回の会談は共通の利益を探る機会とはなるものの、「1回の会談では雰囲気は変わらないだろう」とみている。
<サプライズの可能性>
ドイツは9月に総選挙を控えており、メルケル氏はトランプ氏と親密になれば国内の政敵に批判される可能性がある。一方で、あからさまな対立はドイツの国益を損ないかねない。
メルケル氏周辺は首脳会談でのサプライズを恐れている。
安倍首相は2月の日米首脳会談で、トランプ氏と19秒間の長い握手を交わした。メイ英首相は1月のトランプ氏との会談でホワイトハウスを並んで歩いた際に手をつなぐ様子が報道され、一部メディアで批判された。
イスラエルのネタニヤフ首相は先月トランプ氏と会談。首相や周辺はあらゆるシナリオに対応できるよう準備したが、トランプ氏がパレスチナ国家を樹立しイスラエルとの共生を目指す「2国家共存」にこだわらないと発言したことで意表をつかれる結果となった。
メルケル氏は子どものころサプライズが嫌いだったため、クリスマスに想定外のプレゼントが贈られないよう、数カ月前から欲しいもののリストを用意していたと語ったことがある。しかしトランプ氏との会談では、サプライズへの心の準備が必要かもしれない。
*写真を差し替えて再送します。

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