2014.9.30 05:00
来年末の東南アジア諸国連合(ASEAN)経済共同体(AEC)発足を前に、タイと周辺各国(マレーシア、ミャンマー、ラオス、カンボジア)との陸路による国境貿易が活発化している。
なかでも、ミャンマー、ラオス、カンボジアの3カ国の対タイ貿易収支(ミャンマー発の天然ガスを除く)は、年10%を超える高い伸びで推移しており、タイを拠点とした産業補完の構図が鮮明となりつつある。タイの軍政当局も国境検問所周辺に経済特区を設置する方針を決め、これまでに辺境10県の申請を認可し、後押ししていく考えだ。過熱するタイ国境貿易の最新動向をまとめた。
◆鴻池運輸が新事業
バンコクから東に約250キロ。カンボジア国境にある街がサケオ県アランヤプラテートだ。国境線の向こうにはタイ人富裕層向けに建てられたカジノ付きホテル群。検問所を超えればプノンペンまでは8時間という道のりだ。ところが、これまで長距離トラックは通関手続きのため、ここで荷を積み替えなくてはならなかった。付近一帯は日差しが強く、ほこりが舞う乾いた土地。せっかく冷蔵冷凍トラックで荷を運んでも、外気にさらされるため、商品の劣化が深刻な問題だった。
バンコクからプノンペンを経由しベトナムのホーチミンに至るルートは「南部経済回廊」と呼ばれ、国際的にも注目される物流の大動脈。整備を求める声が交易の活性化とともに高まり、関係各国も最近になってようやく対応に乗り出した。ベトナム、カンボジア両国政府は、国境で荷を積み替える必要がなく、同一トラックが両国間を行き交うことができる相互交通ライセンスの交付を開始。現在、タイ政府も発行に向けた準備を進めている。
こうした動きを先取りして、総合物流の鴻池運輸は新たなサービス「メコン・フード・エクスプレス」を8月半ばから始めた。マイナス20度から常温帯まで4温度帯に荷室が区分されたトラックが、バンコクやホーチミンからプノンペンに向けて生鮮品や加工食品などを運んでいく。プノンペンからは衣料品や靴などを輸送する。