アングル:決算後の米国株式市場、従来の変動銘柄は期待外れに
ロイター編集
[ニューヨーク 29日 ロイター] - 米国株式市場で変動の激しい銘柄の一部が数日以内に決算発表を控える中、一部トレーダーは、オンライン映像配信ネットフリックスよりもソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)大手フェイスブックのような値動きを期待している。
ネットフリックス はバイオ製薬大手ギリアド・サイエンシズ などとともに株価が乱高下することで有名だが、最近発表した四半期決算後は異例なほど値動きが落ち着いていた。
一方で、オンライン小売り大手アマゾン・ドット・コム やフェイスブック は決算後の値動きが激しく、近く決算を発表する電気自動車(EV)大手テスラ・モーターズ やオンライン旅行代理店エクスペディア への期待を高めている。
ボラティリティに着目する投資家にとって、重視するのは変動幅であり、値動きの方向ではない。トレーダーらは株価がある程度変動することを見越し、同じ行使価格のコールオプションとプットオプションを買うストラドルと呼ばれるオプション戦略を利用する。
シーブリーズ・パートナーズ(フロリダ州)のプレジデント、ダグ・カス氏は「いつもなら株価変動が激しい企業の多くは決算が予想通りだった。これでは大きな変動はない」と話す。
エクスペディアとテスラはともに31日に決算を発表する予定。トムソン・ロイターのデータによると、両社ともに過去8四半期では、決算発表後の株価平均変動率が約15%となっている。
<アマゾンやフェイスブックの動き目立つ>
最近は複数の銘柄で値動きの大きさが目立った。アマゾン・ドット・コムは決算発表を受け、25日に約10%下落。半面、フェイスブックとメキシコ料理チェーンのチポトル・メキシカン・グリル は過去最高値を更新した。
決算を受けたアマゾンの1日の下げ幅は34ドル強。サーハン・キャピタル(ニューヨーク)のアダム・サーハン最高経営責任者(CEO)によると、オプション市場では22ドルの値動きが織り込まれていた。また、フェイスブックの株価はオプション市場の想定である4.92ドルの値動きを上回って、一時5.45ドル高となった。
ただ、こうした値動きは今シーズンにおける異例なケースといえる。投資家の不安心理の度合いを示すとされるシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティ・インデックス(VIX指数) は現在13を下回っており、過去平均の20も大きく下回っている。
ネットフリックス株は決算発表後1週間で5%安。過去8四半期における決算発表後の平均変動率約19%と比べるとほぼ4分の1にとどまる。
インターネット検索大手グーグル 株は決算発表後1週間で2.5%高。過去8四半期の平均変動率5.5%の半分以下にとどまった。
このほか、ネットワーク機器のF5ネットワークス もこれまでの平均変動率7.85%を下回る1.7%高。ギリアド・サイエンシズはこれまでの1日あたりの平均変動率2.85%に対し、今回は1.1%高にとどまった。
トムソン・ロイターのデータによると、アップル は決算発表後の7営業日で4.8%高。過去8四半期の平均変動率である6.4%を下回った。
ブライト・トレーディングLLC(ラスベガス)のプロプライエタリー・トレーダー、デニス・ディック氏は「前四半期にアップル株にストラドルを利用した投資家は大きな恩恵を受けた」と指摘。当時は決算発表後の1週間で株価は11.4%上昇した。ただ、「今回彼らは期待しすぎたようで、そうした人たちは痛い目に遭った」という。
前出のサーハン氏は「こうした銘柄が大きな変動をみせていた時代は過去のものになりつつある」と述べた。
(Ryan Vlastelica 翻訳:川上健一 編集:内田慎一)
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