コラム:米キャタピラーには苦い教訓、宿敵コマツのジョイ買収

コラム:米キャタピラーには苦い教訓、宿敵コマツのジョイ買収
 7月26日、建機大手コマツ<6301.T>の米ジョイ・グローバル<JOY.N>買収は、5年前の米キャタピラー<CAT.N>によるビュサイラス買収がいかに悪いタイミングだったかを改めて思い起こさせる。写真は米イリノイ州にあるキャタピラーのビジターセンター。2013年11月に撮影(2016年 ロイター/Jim Young )
Quentin Webb
[香港 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 建機大手コマツ<6301.T>の米ジョイ・グローバル買収は、5年前の米キャタピラーによるビュサイラス買収がいかに悪いタイミングだったかを改めて思い起こさせる。キャタピラーにとっては苦い教訓だ。
米重機メーカー、キャタピラーのダグ・オバーヘルマンズ最高経営責任者(CEO)は2010年11月、負債の肩代わり分も含めて総額86億ドルで米採掘・掘削用機器メーカーのビュサイラスを買収することに合意した。
一方、キャタピラーの宿敵であるコマツは先週、ビュサイラスと競合する鉱山機械メーカーのジョイを37億ドルと、キャタピラーの場合と比べてかなり安い価格で買収することで合意した。
キャタピラーが買収に合意した当時のビュサイラスの時価総額は56億ドル、ジョイは75億ドルだった。
しかしこの時、過去最大のコモディティブームはまさに破裂するところだった。アルミや銅など6種類の工業用金属で構成されるロンドン金属取引所(LME)指数は、キャタピラーのビュサイラス買収が完了した2011年7月以降に42%下落した。
これに対してコマツによる買収計画浮上時にジョイの株価は4分の1に下落していた。ジェフリーズのアナリストチームの試算によると、買収価格はジョイの売上高予想の1.4倍。一方でキャタピラーの場合は買収価格がビュサイラスの売上高予想の2倍に達していた。コモディティバブルで売上高が膨らんでいたのだ。キャタピラー自体、この5年間に株価が4分の3に下落した。
コマツはコモディティブームに乗って軽はずみな事業買収に突き進むことはせず、企業価値が下がったタイミングを狙い、じっくりと計画を進める日本式の取り組みをして見せた。コマツは今後の見通しについて、3年は厳しい状態が続くが、その後はジョイにとって状況が好転すると見込んでいる。体力の弱ったライバルをたたくのは日本企業の流儀ではないが、堅実な進め方だ。
実際のところ、必ずしもコマツが安い買い物をしたとはいえない。コマツはジョイについて2021年までに売上高を30億─35億ドル、営業利益率は10─15%の達成を見込んでいる。ジョイは石炭産業への依存度が高く、成長に苦労しそうだ。
従ってコマツが目標達成のためにかなり荷の重い作業を強いられるのは間違いない。しかしキャタピラーによるビュサイラス買収ほど困難なシナリオは想定しにくい。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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