タイ首相代行のニワットタムロン氏、危機打開へ期待される調整力

[バンコク 7日 ロイター] - タイのインラック首相が政府高官人事をめぐり違憲判決を受け失職したことに伴い、首相代行を務めることになったニワットタムロン副首相兼商業相(66)。国外での知名度は低いが、広報戦略にたけ、歩み寄る柔軟性を持ち、極めて深刻な政治危機を打開するには適任とみられている。
ニワットタムロン氏は、タクシン元首相の一族が所有する企業のトップや役員を歴任。2011年の選挙でインラック陣営の選対参謀役を担った。
選挙で大勝し発足したインラック内閣で広報担当の閣僚に就任。その後、商業相として、事実上の政府のコメ買い取り制度の巨額損失問題の対応にあたった。
チュラロンコン大学のNaruemon Thabchumpon教授(政治学)は「ニワットタムロン氏はタクシン氏の信頼が厚く、PR術を知り、ネットワーク作りに優れ、あらゆる方面とうまく立ち会うことができる人物」と評価し、「とげとげしさはない。特に今のような状況下で、敵を作ってはいけないことを心得ている」と述べた。
とは言え、タクシン氏に近いことから、反政府派が抗議の矛を収めるとは考えにくい。
ニワットタムロン氏が引き継いだ内閣は、7月20日に予定される議会のやり直し選挙までの選挙管理内閣。権限は限られ、反政府デモの長期化で低迷する経済に思い切った施策が打つことができない。
ニワットタムロン氏は「選挙管理政権の責任は、できるだけ早期の選挙実施を図ること」と述べ、憲法裁判所の違憲判決後の政治的混乱を避けたい意向を示した。
チャトゥロン・チャーイセーン副首相兼教育相は「われわれにとって最優先課題は、予定通りの選挙実施。ニワットタムロン氏は、歩み寄りも可能という姿勢であり、各方面の協力を取り付けることができるだろう」とロイターに語った。

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