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【特集】ピクスタ Research Memo(5):対応言語を英語、中国語、タイ語へと拡大しており今後も海外販売を強化していく


■成長戦略

ピクスタ<3416>は成長戦略として「顧客基盤の拡大」、「動画素材市場への本格参入」及び「海外販売の強化」の3点を掲げている。顧客基盤の拡大に関しては、素材の品揃えの充実と新規顧客層の開拓によって単品ユーザー層をさらに拡大することと、より高単価でより継続性の高い定額制ユーザーの拡大が中心施策となっている。前述した「ネットワーク外部性」の正の循環がピクスタにおいてはワークしている状況にあるため、同社の思惑通り顧客基盤は拡大していくと弊社ではみている。動画素材市場は前述のようにこれから最も成長率が高い分野と目されており、同社も素材調達と販売の双方で営業を強化するとみられる。海外については対応言語を英語、中国語、タイ語へと順次拡大している。

弊社では、同社は成長戦略の素材を豊富に有していると考えており、上記3点以外にもアライアンスや後述する「fotowa」のようなマーケットプレイス型モデルの特性を活かした新規事業の展開など、様々な成長のための事業戦略を想定できると考えている。以下に弊社が注目する「fotowa」や無料テンプレート提供策などについて詳述する。

(1) fotowa

「fotowa」は個人向けの出張撮影マッチングサービスだ。例えば七五三や入学式などのイベントの際に、写真館に出向くのではなく、自分でフォトグラファーを選び、自分が希望する場所・タイミングでの撮影を依頼することを可能にするサービスだ。ユーザーはPIXTAのプラットフォームを利用してフォトグラファーを検索・予約し、オンラインで打ち合わせの上、撮影当日を迎える。その後、現場撮影を行い、最終的にはオンラインで写真データを受け取る、という流れだ。

サービス概要は、撮影時間1時間で写真提供枚数は75枚以上となっている。料金は平日19,800円、土日祝日23,800円(いずれも税抜き)となっている。同社はこのサービスを2016年2月から首都圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)からスタートし、2017年中には全国展開を予定している。

弊社では、「fotowa」について興味深い試みと期待している。SNS等を通して写真を共有する文化が浸透してきているほか、近年では、従来の写真館型スタジオに加え、ハウススタジオなどで自然なスタイルの写真撮影を提供するサービスも増えてきており、一定の需要があるのは疑いない。さらに、「fotowa」が魅力的なのは写真データを受け取れる点だ。伝統的な写真館での撮影では2カットのハードコピーを1セット(もしくは2セット)というのが基本で、画像データを受け取ることはできない。もしくはデータ受取に高い料金を支払わなければならない場合が多く、写真データを他の形で活用するのが難しかった。「fotowa」はその点の不満を解消してくれる。「fotowa」がどういうスピードで成長するかは未知数だが、「fotowa」のようなサービスが今後成長していくのは間違いないと弊社では考えている。

(2)無料テンプレート

同社は2016年2月から、チラシテンプレート素材の無料提供を開始した。これは、同社がPIXTAにおける重要な顧客層と位置付ける、小規模事業者を対象としたものだ。総務省の平成24年経済センサス・活動調査によれば、従業員300人未満の事業所数は543万社に達している。

このような中小企業では、販促チラシの作成においても専門業者に外注するのではなく、自社で作成しようというニーズが強いはずだ、というのが同社の読みだ。そこでテンプレートを用意しておいて、そこに自社の社名や宣伝文句、及び写真を組み合わせるだけでチラシが完成する仕組みを提供しようというものだ。言うまでもなく、チラシで使用する写真を、PIXTAを通じて購入してもらうことで回収するというモデルだ。

弊社では、無料チラシテンプレートの提供は大きな潜在的可能性があると考えている。アマチュア・クリエイターを活用し、他社と比較して安価な料金設定をしている同社は、競合他社と比較して、一般企業や個人などのライトユーザーとの相性が良いと弊社では考えている。この無料チラシテンプレートの提供は、まさにその潜在顧客層により直接的にアピールするもので、そこに弊社は魅力と可能性を感じる。

課題はその知名度・認知度をどう上げていくかであろう。PIXTAのサイトから無料素材テンプレートに行き着くという流れだけでは、同社が狙う新規会員獲得には不十分ではないかと弊社ではみている。広告宣伝は重要な解決策の1つではあるが、加えて、アライアンス強化によってPIXTA以外のサイトからいかにしてPIXTAに人を呼び込むかが重要となろう。その流れの上に無料チラシテンプレートをうまく仕掛けることができれば、新規顧客の獲得に大きく貢献する可能性は十分にあると弊社では考えている。

(3)アライアンス(提携)戦略

同社が成長する上で、他社とのアライアンスは不可欠だと弊社では考えている。同社自身もこの点については注力しており、“PIXTAパートナーAPI”などを展開している。APIとはApplication Programming Interfaceの略で、外部サービスのなかにPIXTAを組込み、当該サービスのユーザーがそのサービスから直接PIXTAのデジタル素材を検索・利用できる仕組みだ。具体例としては(株)trippiece(トリッピース)が運営する「RETRIP」によるAPI導入例がある。RETRIPはいわゆるキュレーションメディアで、旅行や観光地・タウン情報などについてのまとめサイトだ。ここに投稿するキュレーターが利用できる“公式画像”としてPIXTAが採用されている。PIXTAにとっては、知名度・認知度を高まり、潜在購入者層へのリーチが可能になるというメリットがある。

弊社では他にも様々なアライアンスが可能だと考えている。PIXTAはカメラを趣味とする人がお金を稼ぐ仕組みを提供している。この点に着目すると、例えば、カメラの販売会社やカメラメーカーと提携し、PIXTAのクレジット(コミッション)をカメラの購入に活用するような仕組みが考えられる。また、同様の仕組みをDPE事業者や印刷業者との提携に広げることも可能であろう。API導入策はPIXTAの写真購入者の増加目的としたものだが、弊社が想像するようなケースはクリエイターの増加に寄与する施策と言えよう。PIXTAの隆盛には、投稿素材点数の増大と販売の拡大とが、車の両輪の関係で伸長していく必要があり、そのためには様々な形のアライアンスを積極的に行う必要があると弊社では考えている。

(4)スマートフォンによる画像の取扱い

現在のPIXTAではスマートフォンの画像は取扱い対象外となっている。しかし、普段デジタル一眼レフカメラを持ち歩いている人はさほど多いとは言えないが、スマートフォンを持ち歩いている人は限りなく多い。面白い動画や静止画も、マクロ的に考えれば、デジタル一眼レフカメラよりもスマホの中にこそ存在している可能性が高いと考えられる。同社の重要な特徴であり強みでもあるアマチュア・クリエイターに着目するならば、スマホの中に眠るコンテンツをビジネスチャンスとして取り込むことは、同社が将来的には取り組んでいかねばならない領域の1つなのではないかと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

《HN》

 提供:フィスコ

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