コラム:タイムとヤフーの統合、悲劇の繰り返しか

コラム:タイムとヤフーの統合、悲劇の繰り返しか
 2月23日、米ヤフーと米出版大手タイムが統合すると、悲劇の繰り返しになるかもしれない。写真はヤフーのロゴ。スイスのロールで2012年12月撮影(2016年 ロイター/Denis Balibouse)
By Jennifer Saba
[ニューヨーク 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ヤフーと米出版大手タイムが統合すると、悲劇の繰り返しになるかもしれない。タイムがヤフーの中核事業の買収を検討しているとの報道は、悲惨な結果に終わった米インターネット会社AOLと米メディア大手タイム・ワーナーの統合を思い起こさせる。
AOLとタイム・ワーナーの合併が実現した2000年当時と比べると、出版事業とデジタル事業の統合はより妥当性があるのかもしれない。だが財務面の歪みを踏まえると、そうとは言い切れない。
ブルームバーグによると、シティグループはタイムがヤフーの中核事業を非課税で吸収できるよう、リバース・モリス・トラスト方式の活用を提唱している。ヤフーが自社を分割するために小賢しい手法を探った挙句、辛酸をなめた歴史を考えても、この方式に飛びつくわけにはいかないはずだ。
ヤフーは昨年12月、中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディング株のスピンオフ(分離・独立)計画を撤回した。ヤフーはこの手法を何年も検討してきたが、米政府から課税をほのめかされた。ヤフーが現在、他の選択肢を検討しているのはこのためだ。
タイムはヤフーの10億人近いユーザーを有効活用する手法を見い出すかもしれない。理論上は、広告をより戦術的に販売したり、より多くの読者を見つけ出す機会が生まれるはずだ。しかし、タイムの親会社であったタイム・ワーナーがAOLに吸収された際、同様の戦略は十分に活用されなかった。実際、タイムのジョー・リップ会長兼最高経営責任者(CEO)はタイム・ワーナーとAOLの統合後にAOLの副会長に就任。統合によりタイムの出版事業は何百万人もの読者を獲得できると考えられていたが、この実験は悲惨な結果となった。
さらに、タイムが採用するかもしれない買収方式は分かりにくく、利用されることはまれだ。この方式で他社もつまずいているのだ。一例として米家庭用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は数年前、ポテトチップ部門「プリングルズ」をリバース・モリス・トラスト方式で売却する計画を断念し、他の買い手に直接売却する方式に切り替えた。ヤフーには、自社事業の再編でさらに遅れが生じるのを甘受する余裕はないのに、リバース・モリス・トラスト方式は時間を要する手法だ。ヤフーの中核事業をめぐっては、ケーブルテレビ大手コムキャストや通信大手ベライゾンなど潤沢な資金を有する企業も買収の可能性を探っており、ヤフーにとっては単純明快な解決策があるのではないか。
ただ、ヤフーに対する金融アドバイザーを務めているPJTパートナーズは資産運用大手ブラックストーンの投資助言事業を買収した際、リバース・モリス・トラスト方式を使った実績がある。PJTパートナーズを率いるポール・トーブマン氏は以前、AOLタイム・ワーナーに勤務していた。このためヤフーは少なくとも過去の経験を生かすことはできる。
●背景となるニュース
*ブルームバーグが関係筋の話として23日に報道したところによると、「ピープル」や「スポーツ・イラストレーテッド」などを発行するタイムはヤフーの中核事業の買収を検討している。シティグループはこの案件を非課税とするため、リバース・モリス・トラスト方式の採用を提唱している。
*ヤフーは19日、戦略的選択肢の模索に向け、独立した社外取締役で構成される委員会を設置したと明らかにした。委員会は中核事業であるインターネット検索・広告事業を売却する可能性を追求する。ヤフーはヤフー・ジャパン<4689.T>と中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングの株式も保有している。ヤフーは金融アドザイバーとしてゴールドマン・サックス、JPモルガン、PJTパートナーズを起用した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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