アングル:アジア企業統治に変化、社会的責任投資の急増で

アングル:社会的責任投資に動くアジア企業、世界的潮流に意識変化
 1月19日、「社会的責任投資」が過去10年間で世界的に急増したことで、閉鎖的な経営スタイルで悪名高かったアジア企業も、コーポレートガバナンス(企業統治)の問題に積極的に取り組む姿勢へと変化し始めている。写真は都内で昨年10月撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)
[シンガポール 19日 ロイター] - 「社会的責任投資」が過去10年間で世界的に急増したことで、閉鎖的な経営スタイルで悪名高かったアジア企業も、コーポレートガバナンス(企業統治)の問題に積極的に取り組む姿勢へと変化し始めている。
利益の伸びが鈍化し、中国の経済成長が失速しているため、アジアの企業幹部は「環境、社会、統治(ESG)」原則に則って投資するファンドの要請に、以前よりも耳を傾けるようになった。
国連の責任投資原則(PRI)に署名した世界の投資家の運用資産は現在59兆ドルと、2006年の4兆ドルから急増した。この急増ぶりは、社会的責任投資が長い目で見れば高いリターンをもたらす証拠が増えていることを反映している。
アジア企業の取締役会は少数株主の権利や環境などの問題に無関心な傾向が強かったが、今では企業統治を強化し、すべての株主を満足させることに留意するようになった。
ESG基準企業のベンチマークであるダウ・ジョーンズ・サステナビリティ新興国市場指数<.DJSEMUN>において、アジア企業は今や半分超を占めている。昨年この指数に加わった企業は13社で、うち7社はアジア企業だった。
PRIに署名したアジアの投資家、資産運用会社の数は2006年の7社から70社に増えた。
日本とマレーシアは2014年に独自の社会的責任投資の指数を導入。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がJPX日経インデックス400<.JPXNK400>をベンチマークに採用したことは、こうした投資の重要性が高まっていることを浮き彫りにした。
こうした流れを後押ししているのが、企業の責任ある行動が収益改善に結び付くことを示すデータだ。
例えばアラベスク・アセット・マネジメントとオックスフォード大が200本以上の学術論文を分析したところ、80─90%の研究で持続性基準が良好なら企業のコストは下がり、業績と株価は上がるという結果が示されていた。
もっとも、ESGが実を結ぶまでの時間軸は長いため、企業の姿勢が変化するペースはまだ遅い。国連のPRIに署名したのは世界で1454社に上るが、アジア企業はその5%に満たない。
年金基金オーストラリアンスーパーの投資管理責任者、アンドルー・グレイ氏は「アジアは個々の企業、システム全体のいずれも問題が山積で、ガバナンスの枠組みがあまり発展していない」と指摘した。
(Nichola Saminather and Viparat Jantraprap記者)
*見出しを修正しました。

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