国王の愛犬を中傷、フェイスブックいいね!で訴追 タイで「不敬罪」頻発

 【シンガポール=吉村英輝】タイのプミポン国王(88)が14日、入院先の首都バンコクの病院で行われた新任裁判官らの宣誓式に出席した。国王が公の場に姿を見せたのは約3カ月半ぶり。国民の敬愛を集める国王の病状が懸念されるなか、軍事政権は、乱用ともとられかねない「不敬罪」での取り締まりを強化している。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は14日、男性工員(27)が、国王の愛犬に関する中傷をインターネット上に投稿したとして訴追されたとし、不敬罪適用が「新たな境地に突入した」と伝えた。

 タイでは、王室を侮辱した者を罰する不敬罪が今も存在する。多彩な趣味を持つ国王は愛犬家でも知られ、犬に関する著書が映画化されたりしている。だが、工員の弁護士は、不敬罪が犬にまで「該当するとは思わなかった」と反発。適用範囲が近年、拡大していると懸念も示した。

 この工員は、軍政幹部を巻き込んだ汚職疑惑をネット上で批判したとして先週、逮捕された。その後、フェイスブック上に投稿された、治療中の国王の不適切に加工された写真に「いいね!」の評価を押していたとする不敬罪でも訴追された。有罪ならば、最高刑は禁固37年という。

 タイの警察当局は、米国のデービース駐タイ大使が11月にバンコクの外国特派員協会で行った講演中の発言をめぐっても不敬罪に抵触する疑いがあるとし、関係者を事情聴取している。

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