インバウンド拡大へ妙手 タイのブロガー、みなかみ取材 群馬

 今年の流行語大賞候補にもなったインバウンド(訪日外国人旅行)。今や国を挙げて誘客に懸命だが、現地説明会以上に効果的といわれるのが当該国のブロガーを招きフォロワーに情報発信してもらうこと。紅葉盛りの今月、大手旅行代理店JTBの招きでタイの有力ブロガー6人がみなかみ町を訪れた。何を見て、どう評価し、何を発信するのか。同行してみた。

 タイではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の利用率が高くブロガーの影響力は大きい。6人は20、30代の男女各3人で、FB(フェイスブック)のフォロワー15万人、ウェブの月間ダウンロード数3万~4・5万という人気ブロガーだ。

 9日夕、みなかみに到着すると翌朝、最初に出かけた先は「みなかみ18湯」の一つ宝川温泉。470畳に及ぶ露天風呂は圧巻で海外でも有名。タイでは「一生に1度は入りたい温泉」とされる。6人は紅葉の映える川筋の湯船につかった。

 初来日というスットサイチャイ・チャムパーファンさん(37)は「温泉も景色も最高。山に囲まれた小さな町だけど東京から近いところも魅力的。でも一番伝えたいのは、やっぱりこの美しい自然の景色と温泉ね」と大興奮の様子。

 昼食はレストランでカツ丼やソーセージセット。その後、水上駅周辺で土産物店に入り「ぐんまちゃん」のぬいぐるみや名物「生どら焼き」を購入し、諏訪峡の遊歩道を紅葉が眺めながら散策した。ただ、表情は真剣そのもので、なかなか話を聞けない。彼らも取材中だからだ。マンホールや花、飲食店など、あらゆるものを撮影していた。

 夕方には猿ケ京に移動し赤谷湖が一望できる露天風呂を視察。紅葉の写真に「この景色は今しか見られない」などと書き添え、FBにアップしていた。

 県内の外国人宿泊者数は昨年、集計開始の平成19年以来最多の10万1630人。今年は8月までの速報値で9万7千人と一昨年の年間数を超えた。みなかみ町も昨年度1万1222人が宿泊、今年4~9月は7035人と昨年同期比56%増だ。中でも台湾とタイで半数近くを占めている。

 台湾を含め東南アジアでは雪への憧れも強いといわれるが、6人が口をそろえたのは温泉。東京在住の園田ナッナリーさん(38)は「タイでは温泉に入る習慣は少ないけれど、ここ数年メディアの影響で知られるようになった。温泉に1度入ればリピーターは増えると思う」と話した。

 海外の旅行博にも参加しインバウンドに力を入れる同町観光課では「タイは口コミが口コミを呼ぶネット社会。影響力ある人がFBなどに投稿すると『行きたい』と話題になる。今後も多くのブロガーに来てほしい」と期待を寄せていた。(久保まりな)

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