インタビュー:日本株は魅力的=アライアンス・バーンスタイン会長

インタビュー:日本株は魅力的=アライアンス・バーンスタイン会長
 8月3日、米資産運用大手アライアンス・バーンスタイン(AB)のピーター・クラウス会長兼最高経営責任者(CEO)は、ロイターのインタビューに対し、日本株はファンダメンタルズ・バリュー上の理由から依然として魅力的な投資対象であると述べた。写真は、都内の株価ボード、6月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 4日 ロイター] - 米資産運用大手アライアンス・バーンスタイン(AB)のピーター・クラウス会長兼最高経営責任者(CEO)は、ロイターのインタビューに対し、日本株はファンダメンタルズ・バリュー上の理由から依然として魅力的な投資対象であると述べた。
そのうえで預貯金に眠る個人マネーを動かせるかどうかがアベノミクス成功の鍵となるとの認識を示した。
同社は米国ニューヨークに本拠を置く資産運用会社で、6月末の運用資産総額は4851億ドル(約60兆円)。
インタビューは同氏が来日した3日に東京で行った。概要は以下の通り。
──これまでのアベノミクスの評価は。
「脱デフレ、インフレ誘導という重要テーマに焦点を当てたアベノミクスは、日本経済の成長資産とリスクテークへの関心を生むためにとることができた最善の策だったと思う。当初、外国人投資家はその持続力について懐疑的だったが、ここまでの成果は私の期待を上回るものだ。マーケットにも、首相が推進するデフレ脱却に向けた取り組みやコーポレートガバナンス改革によるプラスの影響が現れ始めている」
──日経平均<.N225>は円で2.5倍近く、ドル建てでも約1.5倍に上昇した。
「アベノミクスが始動するまで、(日本の)投資家は金利が事実上ゼロである預貯金に資産を眠らせておくことに満足していた。国内投資家よりも一足早く、外国人投資家は投資スタンスを変化させており、ここ数年間、海外投資家が日本株を買っているのは周知の通りだ」
「しかし、日本の株式市場が真に力強い成功を収めるためには、国内で株式投資への意欲が高まることが必要だ。国内投資家の投資スタンスが変わるのにはかなりの年数がかかる」
「こうした中でGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がアセットアロケーションを見直した(株式投資を増やした)ことは、ポジティブなモメンタムが生まれつつあることに気付いた個人や機関投資家が追随買いを始めていることの好例であろう」
──安全保障関連法案への対応をめぐり、安倍内閣の支持率がこのところ大幅低下している。
「(海外)投資家は安倍首相の憲法解釈云々に特段の意見を持っているわけではないと思う。安倍政権の支持率が下がっても改革が継続するのであれば、投資家は特に意に介さないだろう」
「逆に仮に首相の政治信条が彼の政権維持能力に影響したり改革が後退するようなことがあれば、マーケットを動揺させる要因となるだろう。その観点から投資家は一定の関心を持って事態の推移を見守っているが、現時点では投資家はそうした大きな悪影響を懸念してはいないと思う」
──日本株にさらなる上昇の余地はあるか。
「PBR(株価純資産倍率)の低さ、バランスシート上の潤沢なキャッシュ、世界的にみても速いペースで伸びる企業収益、コーポレートガバナンスの進展とROE(株主資本利益率)への意識の高まり、円安の継続、中国よりも低い単位労働コスト、などのファンダメンタルズ・バリュー上の理由から、われわれのようなバリュー投資家にとって日本株は魅力的に映る。ABは引き続き日本株をオーバーウエートしている」
──最近の中国株急落やギリシャ問題などのリスクをどうみるか。
「中国、ギリシャに限らず、東欧や中東など世界の株式市場に影響を与える外的リスクはいくつもあるが、日本市場に関して言うと、中国発のリスクの影響が最も大きいだろう」
「ギリシャについては、いずれ欧州は妥協点を見出し、ギリシャがユーロ圏を離脱することなく解決する道を見つけると思う」
「中国株急落については、タイミングはともかく、遅かれ早かれバブルが崩壊するだろうことは予想できたのでサプライズはなかった。バブル崩壊を経たマーケットはいずれ新たな均衡点で落ち着くだろう」
「今回、中国政府が混乱収拾のため講じた措置はあまり効果的だったとは思わないが、それでも中国は今後も資本集約型産業重視の経済構造からサービス業主導の経済への転換を図るため改革を継続し、またペースは鈍化するとはいえ経済成長を続けると考えている」
──米国ではFRB(連邦準備理事会)が年内にも利上げしようとしている。
「米利上げについては、年内の実施を予想している。米日欧を含むグローバルな株式市場はいずれも、一時的に不安定になるとみている。ただ、それはあくまでも短期的な影響にとどまるだろう。投資家が利上げは当局が米経済が十分な強さを備えていると判断したためだときちんと理解すれば、投資家は成長資産である株式への投資を行うため、じきにマーケットに戻ってくるはずだ」
「それは、BOJ(日本銀行)やECB(欧州中央銀行)といった他の中銀に対しても出口政策の道筋を示すことになるだろう」

植竹 知子 編集:伊賀 大記

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