焦点:今週の米利上げ観測は後退、新興国市場なお警戒モード

焦点:今週の米利上げ観測は後退、新興国市場なお警戒モード
 9月16日、今週17日に米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが発表される確率は低くなっており、もし予想が外れれば、新興国市場は大きな影響を受ける見通しだ。写真はFRB本部。昨年10月撮影(2015年 ロイター/Gary Cameron)
[シンガポール 16日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の約10年ぶりとなる政策金利引き上げはいつになるのか。そのタイミングを待ち受けるドラムロールは長い間鳴り響いてきた。今週17日に連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが発表される確率は低くなっており、もし予想が外れれば、新興国市場は大きな影響を受ける見通しだ。
FRBの高官が今年半ば、ほぼゼロの水準にある政策金利を下期にも引き上げると示唆して以来、新興国通貨や株式相場は下落し、債券利回りは急上昇(価格は下落)した。
当初は利上げ時期が9月になるとの見方が多かったものの、米国のインフレ率は目標を下回り、コモディティ価格は下落し、中国の成長鈍化が世界経済に冷水を浴びせた。これにより、12月にずれ込む可能性が高まっている。
ロイターが実施したプライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)調査で、利上げが今週になると答えたのは17社中7社にとどまった。だが、少数派の方が正しかったことが17日に証明されれば、投資家は利上げの規模とペースの速やかな再検討を迫られ、各市場の金利にも影響が出るだろう。
「市場は利上げを30%織り込んでいる。完全に織り込んでいるわけではない」。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(シンガポール)のアジア金利・通貨ストラテジスト、クラウディオ・ピロン氏はこう指摘。「世界の景気回復の歩調が合っていない中で、世界の最も重要な流動性の供給者が金融引き締めを行おうとしているというのは難しい状況だ。コモディティ価格には引き続き影響が出るだろう」と述べた。
大半のアナリストは、2013年5月のいわゆる「テーパリング騒動」ほどの激しい反応は起きないとみている。利上げ予想はすでに、相場に悪影響を与えているためだ。MSCI新興国株指数<.MSCIEF>は年初から16%下落し、中南米株指数は27%下落している。
<急反発はあり得るか>
利上げが17日に発表された場合、直後の相場急落を経て何が起きるのか。それは、FRBが提示する政策の道筋によって変わってくる。
ベアリング・アセット・マネジメント(香港)のアジアマルチアセット責任者であるKhiem Do氏は、利上げ時の声明がハト派的内容であれば、新興国相場は急反発すると予想した。
HSBCアジアのエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏は、投資家はすでにポジションをディフェンシブに調整しており「最近数カ月の間相場に不透明感を与えてきた『タカ派的据え置き』より、『ハト派的利上げ』の方が混乱は少ないだろう」とみる。
計画を狂わせるのは中国かもしれない。FRBの以前の金利引き締めサイクルでは、中国は世界の成長や需要のけん引役ではなかった。
「FRBが利上げをしようがするまいが、中国の成長が安定化しているという兆しが明確にならなければ、新興国市場の急反発はあり得ない」。スイスのプライベートバンク、ロンバー・オディエ(ロンドン)の世界債券ストラテジストを務めるサルマン・アフメド氏はこう話した。

Vidya Ranganathan記者 翻訳:田頭淳子 編集:加藤京子

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