バンコクテロ

「治安売り物」のタイ軍政に打撃 反体制派締め付け強化 民政移管遠のく恐れも

 タイの首都バンコクで17日に起きた爆弾テロは、昨年5月のクーデターで「治安維持」を大義名分に掲げて政権の座に就いた軍事政権に大きな打撃を与えた。体面を傷つけられた軍政は反体制派の取り締まり強化に動くとみられる一方、民政移管に向けた憲法制定作業の遅れも懸念される。(シンガポール 吉村英輝)

 テロから一夜明けた18日の外国為替市場で、タイの通貨バーツは一時、対ドルで約6年4カ月ぶりの安値水準となる1ドル=35・55バーツまで急落した。中国経済の減速で輸出が低迷する中、テロが海外投資家の不安材料に追加され、バーツ売りを加速させた。

 主力の農業も価格低迷や日照りで不調が目立ち、反政府デモ当時の落ち込みから回復した観光業は「数少ない明るい材料」(ロイター通信)だっただけに、外国人や観光客が犠牲となった今回のテロで景気が再び冷え込みかねない。

 テロの実行犯や首謀者が何者かは判明していないが、注目されるのが、軍部の圧力で沈黙してきたタクシン元首相派の動向だ。タクシン派は、軍政が来月初旬にも新憲法草案を承認するのをにらみ、反軍政の言動を活発化させている。

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