江藤詩文の世界鉄道旅

タイ国鉄メークローン線(6)酷暑のリベンジ大失敗 名物列車に2度の失恋

【江藤詩文の世界鉄道旅】タイ国鉄メークローン線(6)酷暑のリベンジ大失敗 名物列車に2度の失恋
【江藤詩文の世界鉄道旅】タイ国鉄メークローン線(6)酷暑のリベンジ大失敗 名物列車に2度の失恋
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 ファーン。ファーン! ファーンッ!!

 列車の到着を告げるチャイムが市場内に大音量で鳴り響き、売り子が屋台のひさしをのろのろとたたみ終わると、ついに念願のメークローン線が、威風堂々と姿を現した。

 そもそも、市場の構造自体が車体に限りなく接近しているうえ、売り子は動く列車のすぐそばに座ったままだし、国民性なのか、地元の人々は鉄道の目の前を悠々と歩いて横断したり、危ないことこのうえない。

 そのうえ自分も含めて多くの見物客が押しかけているのだ。列車の正面で待ち構えて車体に触れようとする酔っぱらった欧米系バックパッカーや、運転席に向かってフラッシュをたくのは危険行為だが、おかまいなしにストロボを光らせるアジア各国の観光客も多い。メークローン線はのろのろと駅へ入構しながら、いらだたしげに警笛を絶え間なく鳴らし続けた。

 腕をいっぱいに伸ばせば触れられそうなほど至近距離を通り過ぎたメークローン線の車窓は、幸運にも乗車できた観光客が鈴なりになり、灼熱の太陽の下で待ち構える見物客に向かって、まるでスターのように満面の笑顔で手を振っている。あぁ、悔しい。やはり鉄道は、乗らずに外から見ているだけでは、楽しみが半減する。

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