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【タイ】ベテランフォークシンガーが2年後の引退を宣言
配信日時:2015年4月26日 9時00分 [ ID:1843]

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先達のカラワンやカラバオに比べれば、まだまだ若いといえるポンシットカンピーさんだが、その雰囲気はすっかり落ち着いている。(ルークトゥンタイランド 提供)

 2015年4月24日、タイの有名フォークシンガー、ポンシット・カンピーさん(47才)が、2年後の50才になったら歌うことを辞めるとテレビの芸能情報番組で語った。

 ポンシット・カンピーさんは、「タイで生きる為の歌」(タイ語でプレーンプアチーウィット)と呼ばれるジャンルのシンガーソングライターとして1987年にデビュー。1990年永遠の時(原題:タロートウェラー)の大ヒットで一躍トップアーティストとなった。つい最近でも「愛一筋(ラックディオ)」という曲がリバイバルヒットしており、ベテランとなった今でも存在感は大きいままだ。


 タイ人の多くは音楽に対して、曲ごとの好きか嫌いかで、特に歌手にこだわることは少ない。しかし、このジャンルについては、こだわりを持つファンが多い。

 ファンの多くは、革ジャンにバンダナ、ビッグバイクに乗っていそうな、いわゆるワイルドアメリカンなイメージのファッションを好んでいる。同じジャンルのカラワンやカラバオにも共通のファンが多い。

 今回、彼が引退を決意した大きな理由は、そのファンに由来するものだった。彼のコンサートでは、毎回のように観客同士のケンカが起きるのだ。その度に演奏を中断せざる得ず、一回のコンサートでも度々中段を余儀なくされることもある。時には傷害事件などになることもある。

 奇しくも、この話題がネットで盛り上がっている最中、バンコク近郊で24日夜に予定されていたポンシットさんのコンサートは、安全を確保できないとの理由から警察の中止要請があり、中止になってしまった。

 「僕は楽しんでもらおうと歌い、演奏している。でもコンサートの度にケンカが起きる。けが人が出たときは特に辛い。何年も問題解決の手だてを考えて来たけれど、自分が歌うことをやめるしかないと思えて来たんだ」

 ポンシットさんは、こう話しながらもできることなら歌い続けたいという内心を滲ませていた。しかし、この決断に家族は反対していないという。

 普段は穏やかで微笑みの国との名前通りのタイ人だが、一度火がつきケンカになると止まらなくなる。それが集団同士で起きた場合は、暴動のようになり、時には銃撃戦になることもある。近年、コンサートの出入りには機動隊が所持品を検査するため、拳銃などが持ち込まれることは無くなって来ているが、ケンカは相変わらずだ。

 筆者は何度もタイ人歌手のコンサートに行っているが、時折、演奏が中断したと思ったら、会場でケンカ起きていたということもあった。しかも、ほとんどの場合は当事者たちを追い出してすぐに納まる。

 しかし、2003年にルンピニナイトバザール敷地内で行われた著作権保護を訴えるコンサートでは、対立する専門学校の学生同士が乱闘となり、周辺の通りが封鎖される騒ぎとなった。結局、3日間開催される予定が2日に短縮されてしまう結果となったのだが、こうした学生、学校同士の対立も関係している場合も多い。


 好きな歌手を応援しに行ったのなら、単純に楽しめばいいのだが、何が気に入らないかケンカになる。それが高じて解決の為にその歌手が引退という、なんともあり得ない事態に、ネットの口コミサイトでは惜しむ声と問題解決を話し合う書込みが多く寄せられている。

「ファンが熱狂するのはわかるけど、なんでケンカになるんだ?」

「何度か彼のコンサート行ったけど、いずれもケンカで中断した。半分も演奏しないうちに中止になっちゃったときもあったよ」

「ケンカするのは決まって若い学生たちだ。奴らを入場禁止にすればいい」

「レッドカードを出すのがいいんじゃね? コンサート永久追放で」

「あんなバカどものために辞めちゃうなんて、最悪の解決手段じゃないか」


「あと2年の間にファン全員が態度を改めれば彼も考え直すはずだ」

「どうか、やめないで。ずっと歌い続けてください」

 タイの音楽ジャンルの一つ「生きる為の歌」は、歌謡曲ルークトゥンと起源を同じくする音楽で、アメリカのカントリーミュージックをベースに成り立った。

 初期の頃は、タイの共産ゲリラや学生運動などとの関わりもあり、超ベテランバンド「カラワン」はアコースティックフォークで、反戦のメッセージを歌うことが多く、ヒロシマという曲も残している。メンバーらは反政府運動の学生活動家らと共に山にこもったこともある。

 その後に登場したカラバオは、ロックバンドの形態をとり、政府や社会の風刺や皮肉る曲を多く輩出した。

 対してポンシットカンピーさんの曲は、か細い歌声とともにラブソングを歌うことが多い。そのため、日本で例えると岡林修康や吉田拓郎に続く、さだまさしや初期の長渕剛のようだと言われたことがある。

 しかし若い頃は「妾は30人位いてもいいね」と発言するなど豪傑な一面もあった。最近では家族と落ち着いているようだ。

【翻訳/編集:そむちゃい吉田】

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