プラユット政権考

「真実伝えぬ記者は処刑することになる」タイ首相強権国家総動員体制「国民は政権の目と耳になれ」

 戒厳令が出されたままのタイの首都バンコクで3月上旬、爆弾騒ぎが起きた。昨年5月のクーデターの大義名分である「治安維持」が脅かされる事態に、軍事政権を率いるプラユット首相は、徹底的な取り締まりを命令。国民にも「政権の目と耳になるように」と総動員体制を訴えた。怒りの矛先はメディアにも向かい、真実を伝えない記者は「処刑することになるだろう」とも言い放った。(シンガポール 吉村英輝)

 爆弾テロは3月7日、バンコク都内にある刑事裁判所の駐車場で発生。バイクで乗り付けた2人組の男が、手投げ弾を爆発させた。事前に情報を入手した治安部隊と銃撃戦になり、取り押さえられた。逮捕された1人は、1万バーツ(約3万7千円)で雇われたと供述。かつて所属していたタクシン元首相派団体の「反独裁民主統一戦線」(UDD、通称・赤シャツ)」の指示を認め、他にも「100カ所以上で同様のテロが計画されている」と打ち明けたという。

 ロイター通信によると、プラユット氏はこの事件を受け、「治安が最優先されなければならない」として市民に情報提供と治安維持への協力を要請した。また、「悪人には屈服しない」としたうえ、「外国人からの信用を再構築しなければ」とも述べた。犯人の男が、爆弾事件について「国連の介入を狙っている」と証言しており、国際世論の注意喚起を狙ったタクシン元首相支持派のテロによる巻き返しに、神経をとがらせているもようだ。

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