鉱工業生産は1月までタイ洪水挽回生産続く、2月以降は不透明

[東京 31日 ロイター] 経済産業省が31日発表した2011年12月鉱工業生産指数速報によると、12、1月はタイ洪水の影響からの反動増で自動車や情報通信機械で挽回生産が続くものの、2月以降は円高や海外経済減速から生産見通しは不透明となっている。
予測指数は生産計画見直しで上昇しているものの、経済産業省では企業のそうした見方を踏まえて「生産は横ばい傾向」との判断で据え置いた。
<洪水の影響はほぼ終息、自動車や情報通信機械で挽回生産>
12月の鉱工業生産(2005年=100、季節調整済み)は前月比4.0%上昇の93.6となり、水準としては8月と並び、洪水の影響による落ち込みから脱して2カ月ぶりの上昇となった。ただ、震災前の水準には戻っていない。ロイターの事前予測調査では前月比3.0%上昇と予想されていたが、発表数値は予想を上回った。上昇したのは16業種中10業種。
タイ洪水によるマイナスの影響が12月上旬にはほぼ解消し、輸送機械や部品の生産が回復したほか、情報通信機械でもデジタルカメラやカーナビの挽回生産が寄与した。また携帯電話の新製品生産が大きく寄与した面もある。電子部品・デバイスでは、半導体集積回路(ロジック)などで洪水の影響が解消し、大きく伸びたほか、メモリーも携帯電話向けが寄与した。
出荷指数も前月比4.5%と大きく上昇、出荷増を受けて在庫指数は2.9%低下した。
10─12月は前期比0.4%低下となり、指数は92.0。昨年1─3月期の92.3には届かなかった。2011年通年では91.1で震災と洪水、さらに世界景気減速といったあおりを受けて前年を3.5%下回り、2年ぶりの低下。
<予測指数1、2月上昇も、反動や計画見直し要因>
先行きの生産予測指数は1月が前月比2.5%上昇、2月が同1.2%の上昇となった。1月は引き続き自動車や情報通信機械で挽回生産がけん引。経済産業省によると、2月は上昇となっているものの、鉄鋼や電子部品・デイバイスで生産計画見直し時期に当たり、数字が見直されたためで、企業からは底打ち感や持ち直しといった見通しは出ていないという。
むしろ円高や海外経済減速の影響を指摘する声が目立ち、一般機械の1、2月上昇見通しも、背景には円高による値上げ前の駆け込み需要にすぎないとの事情がある。化学でも、市況悪化に円高が拍車をかけているもよう。
<先行き生産回復期待に至らず>
全体として、生産はタイ洪水の影響からほぼ脱したものの、円高や欧州危機による下押し圧力で持ち直し感に乏しい展開となっていることがうかがえる。震災からの復興需要がいつからどの程度寄与してくるのか、といった点も注目されている。
市場からはとりあえず年明けの生産動向は底堅く推移するものの、先行きへの期待感が出るには至っていない。大和総研の試算では、予測指数からみて1─2月平均の生産水準は10─12月対比でプラス4.9%となり、2四半期ぶりにプラスへ転じる見通し。このため生産は「しばらく底堅く推移する公算」とみている。ただし「海外経済の減速や円高の長期化などが引き続き生産の重石になるリスクを注意深く見極めていきたい」指摘した。
みずほ証券のマーケットエコノミスト、河上淳氏も「生産の先行きに明るさが出てきたことで、市場に景気の踊り場局面から脱却するとの期待が高まる可能性がある」としながらも、「方向感として株高・債券安の材料だが、欧州債務問題などの海外情勢に市場参加者の関心が向いている」とみている。楽天証券チーフエコノミストの村上尚己氏は「米国経済の復調が、欧州などのそれ以外の地域の景気減速を補えるかどうかが焦点」だと予想する。
(ロイターニュース 中川泉)
*詳細な情報を追加して全体を再構成しました。

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