この新投資促進戦略について、2015年2月に、東京、名古屋、大阪で説明会が開催された。そのなかでタイ投資委員会(BOI)が新投資促進戦略の目的として強調したのは「中所得国の罠(middle income trap)」の回避であった。「中所得国の罠」とは、労働集約的産業を中心に成長し、中所得になった国が資本集約的・技術集約的な産業への転換を怠ると、高所得国への移行が困難になるというものである。つまり、タイ政府の意図は、新投資促進戦略を通じて産業構造の高度化を図ることである。 もっとも、タイ政府が産業構造の高度化を急ぐ背景には、「中所得国の罠」の回避以外にも、直面する労働力不足がある。タイの失業率は1%を下回る一方、賃金(製造業)は過去4年間で50%以上も上昇している。