UPDATE2: 11月鉱工業生産速報はタイ洪水と円高の影響で前月比‐2.6%、先行きは挽回生産

*詳細な情報を追加して再構成しました。
 [東京 28日 ロイター] 経済産業省が28日発表した11月鉱工業生産指数速報(2005年=100、季節調整済み)は前月比2.6%低下の90.1となった。指数の低下は2カ月ぶり。ロイターの事前調査を下回った。タイ洪水による部品不足などで自動車や情報通信機械、鉄鋼の生産が停滞したほか、長引く円高による受注減が影響した。12月、1月の予測指数は、洪水による生産の遅れを挽回するために高い伸びが続く見通しとなった。
 タイ洪水の影響は10月の段階ではまださほど国内生産に波及していなかったが、11月になると鮮明に表れた。自動車では部品が不足し、乗用車生産そのもののに影響。欧州・中南米・中近東向けの普通乗用車や、国内向けの小型乗用車の生産が停滞し、輸送機械全体では前月比9.5%減となった。また携帯電話やデジタルカメラも影響を受けたほか、鉄鋼では普通鋼冷延広幅帯鋼の生産が停滞、鋼板製品や粗鋼にも波及した。
 一方で、夏場以来の円高の長期化は、世界経済減速と相まって輸出の減少を招いている。貿易統計で各地域向けともに輸出数量が落ちていることが確認できるが、生産面でも生産減の理由に円高を挙げている企業も目立つ。
 一方、生産指数が上昇した業種も、減少業種と同数ある。電子部品・デバイス工業は先月の落ち込みの反動でモス型半導体メモリが好調だったほか、国内向けにマイコンが伸びた。タイ洪水による国内代替生産で海外向け省エネ用の発行ダイオード等も増産となった。また、飲料用や食品トレー用などプラスチック製品も伸びたほか、ニット製品など繊維工業も好調だった。
 先行き予測は、高い伸びが続く。12月は前月比4.8%上昇、来年1月も3.4%上昇が見込まれている。企業からは、洪水の影響を受けた業種を中心に挽回生産による増産のため、とのコメントが寄せられているという。10─12月期は予測指数を前提とすると、前期比0.1%低下とほぼ横ばいとなる見通しとなった。
 経済産業省は、洪水による影響で一時的に減産・その後の挽回生産で振れが大きくなっていることを踏まえて、生産の基調判断を「横ばい傾向にある」として据え置いた。
 鉱工業出荷指数は前月比1.5%低下、在庫指数は0.8%低下した。 
 みずほ総研のシニアエコノミスト、武内浩二氏は、11月についてはタイの洪水被害の影響もあり指数の低下は一時的で、先行きは回復に向かうとみているが、「今後は海外の景気減速懸念で輸出減が予想されており、国内景気は慎重にみる必要がある。緩やかに回復していくとの見方に変わりはないが、ペースは鈍化する」と予想している。
 *経産省の発表資料は以下のURLでご覧ください。
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 (ロイターニュース 中川 泉;編集 田中 志保)

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