タイ次期首相候補インラック氏、最低賃金上げ「来年1月に」
タクシン元首相派のタイ貢献党を率いて今月3日の同国下院選で勝利し、初の女性首相就任が確実なインラック氏(44)は8日、バンコクの党本部で日本経済新聞など海外メディアと会見した。政策公約の目玉の法定最低賃金引き上げについて「私は産業界出身で、企業に与える影響は十分理解している」としたうえで、法人税減税と併せて「来年1月1日付で実施したい」と明言した。
同党は最低賃金を1日一律300バーツ(約810円)に引き上げる計画。都県別に159~221バーツの現行水準からは4~9割の大幅アップとなるため、経済界からは反対の声が上がっている。
企業の負担増を相殺するため、現在30%の法人税を来年23%、2013年に20%まで引き下げる方針。インラック氏は「企業には準備する時間を与える。実施にあたっては様々な意見を聞き、最善の方策をとる」と柔軟姿勢を示して理解を求めた。
福島第1原子力発電所事故を受けて、同国内で反対機運が高まっている原発建設計画について「個人的意見では(導入に)賛成しない」としつつも「政権発足後に方向性を話す」と説明。国境紛争を抱えるカンボジアとの関係改善についても「まずは外交交渉の席についてから」とかわした。
実兄のタクシン氏を含む政治犯に対する恩赦については「まずはどうやって国民和解を実現するかが重要。恩赦を実行するかどうかは(第三者機関である)和解検討委員会の結論次第だ」と述べるにとどめた。
政治経験のないインラック氏を「タクシン氏の操り人形」と揶揄(やゆ)する声もある。インラック氏は「党のメンバーや閣僚の意見を聞き、自分で決断する。私が信頼に足ると証明するための時間を与えてほしい」と語った。(バンコク=高橋徹)