コラム:米でマスク不足が深刻化、中国依存で関税引き上げ直撃

コラム:米でマスク不足が深刻化、中国依存で関税引き上げ直撃
米国でマスクなど衛生用品のサプライチェーン(製品の調達・供給網)の状況悪化が続いている。写真は1月30日、イリノイ州シカゴで撮影(2020年 ロイター/Kamil Krzaczynski)
Gina Chon
[サンフランシスコ 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国でマスクなど衛生用品のサプライチェーン(製品の調達・供給網)の状況悪化が続いている。マスクや手袋、防護服はすでに米国による中国製品の輸入関税引き上げの影響で在庫が圧迫され、ジャスト・イン・タイム方式(カンバン方式)の在庫管理に影響を与えていた
ここに新型コロナウイルスの感染流行の懸念拡大が加わり、不足は深刻化している。トランプ政権は経済のグローバル化の流れへの防御措置を求めるが、こと衛生用品となると、もしかしてトランプ氏にも分があるのかもしれない。
平常時でさえ米国の衛生用品は供給がぎりぎりだ。倉庫に入るときと販売するときの間隔を短縮する生産方式のためだ。これが対中通商戦争で状況悪化した。マスクなど織布製品は圧倒的に中国で生産されているのに、米国への輸出品には10─25%の関税が課せられ、米国への供給が割を食った。
さらに米国内での新型ウイルス流行の懸念が、事態を悪くした。あるニューヨーク市の高校は3日、感染が疑われる事例を受けて休校にすると発表。国内の死亡例の報告も続き、保健当局は地域社会が感染拡大に備えるべきだと要請した。ただ、米政府はまだ衛生用品の統制はしていない。マスクのメーカーのマークライトは先月、中国にある自社工場がマスクの輸出を禁じられたと発表している。同社の顧客はホーム・デポなどだ。
トランプ政権は、朝鮮戦争時の1950年に成立した「国防生産法」に基づく特別な権限を増産態勢に利用しようとしている。米政府は先週、マスク5億枚を確保し、向こう1年半で放出する方針を発表した。この数は現在の備蓄の約17倍に相当する。しかしどこから製品を調達するのかは明らかになっていない。国内メーカーは1社しかない。海外メーカーは生産しても抱え込むだろう。当地の病院がすでにマスク不足に追い込まれている。
トランプ政権は通商から移民まで、さまざまな面で保護主義的な見解を取っている。衛生用品のサプライチェーンにも同様の哲学を持ち込む可能性はある。製品に一定の国内調達比率を命じることなどだ。こうしたことは、米国民に今は役立たないが、将来への準備では助けにはなるだろう。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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