コラム:伝説的デザイナー失うアップル、輝きは維持できるか

コラム:伝説的デザイナー失うアップル、輝きは維持できるか
 6月27日、米アップルは、高級ブランド業界の華やかではない部分を見たようだ。写真は、クックCEOとアイブ氏(右)。3日撮影(2019年 ロイター/Mason Trinca)
Tom Buerkle
[ニューヨーク 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米アップルは、高級ブランド業界の華やかではない部分を見たようだ。iMacからiPhoneまで多くの製品のデザインを手掛け、同社を時価総額9200億ドルに押し上げることに貢献した最高デザイン責任者のジョナサン・アイブ氏が退任を発表。しかも、スマートフォンの売り上げが落ち、米中貿易戦争が同社のサプライチェーンを直撃しているタイミングでだ。
デザインに大きく依存する企業は才能の流出から立ち直れるが、そのプロセスは時に痛みを伴う。グッチに聞いてみるといい。
アイブ氏は、1997年にアップルに復帰したスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)が手掛けたiMacをデザイン。以降、同社の「スタイル」と「機能」の融合を絶妙に表現してきた。
約10年後、アイブ氏は同じ偉業をiPhoneでやってのけた。これにより、時代はスマートフォンに突き進み、まるでパリのファッションブランドのようにアップル製品をより高額で販売することが可能になった。
2011年のジョブズ氏の死後、ティム・クックCEOはアイブ氏をハードウエアだけでなくソフトウエアも担当する責任者に任命。2018年、アップルは時価総額が1兆ドルを超える初の企業となった。
しかし、そうした統治にはリスクがつきものだ。高級ファッション業界を見てみよう。
2004年にデザイナーのトム・フォードが去った後のグッチは、道を見失ったようだった。いまはケリングと呼ばれている親会社が事態を好転させるまでには、数年以上の月日が必要だった。
現在、アレッサンドロ・ミケーレが率いる同ブランドは、直近の四半期に年率25%近く売上高を伸ばした。
2018年には英高級ブランド「バーバリー」が、デザイナーのクリストファー・ベイリー氏が退任して以降、盛り返しに苦戦している。ベイリー氏はバーバリーのチェック柄を世界的なラグジュアリーブランドに昇華させた。
アップルには豊富な才能が控えている。しかし、同社は非常に不安定な時期にアイブ氏を失うことになる。世界にはスマートフォンがあふれかえり、調査会社インターナショナル・データによると、今年第1・四半期の端末販売は世界で7%減少。アップルのiPhoneにいたっては売上高が17%減少している。
さらにトランプ米大統領が仕掛ける米中貿易戦争により、中国のサプライヤーからの供給は打撃を受けている。
今のアップルは、「流行遅れ」などというダメージは絶対に避けなければならない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」, opens new tab

Opinions expressed are those of the author. They do not reflect the views of Reuters News, which, under the Trust Principles, is committed to integrity, independence, and freedom from bias.