ブログ:「尼」禁止に挑むタイの女性出家者たち

ブログ:「尼」禁止に挑むタイの女性出家者たち
1月4日、タイでは、長年の仏教の伝統を打ち破って「出家」する女性が増えている。写真は2018年12月、 ソンタムカンラヤニー寺院で行われた出家の儀式で剃髪する女性(2019年 ロイター/Athit Perawongmetha)
[ナコンパトム(タイ) 4日] - タイでは、長年の仏教の伝統を打ち破って「出家」する女性が増えている。プーサワン・チャンタウォンさん(49)も最近、バンコクの隣県にある、正式には寺院と認められていない尼僧院で出家した。
ソンタムカンラヤニー寺院で行われた儀式で、ともに出家する10代から80歳代までの21人の女性の先頭に立ったプーサワンさんは、白い修行着を、男性の僧侶だけが着る黄衣に取り換える準備をしながら、こみあげる涙をこらえていた。
12月5日に行われたこの出家式を前に、キャリアウーマンのプーサワンさんは、「(尼が認められない)障害を乗り越えて、ずっと望んできた出家をする」と話した。寺には、9日間滞在した。
タイでは1928年に女性の受戒が禁止されたため、正式に僧侶になれるのは男性に限られている。女性の修行者は、正式な僧侶や出家者とは認められていない。
信心深いタイの女性に残された選択肢の1つは、僧侶よりも戒律が緩い白衣の「修行者」となることだが、寺では家事周りの仕事に回されることが多い。
近年は正式な女性僧侶である「比丘尼」になることを望む女性仏教徒が増え、スリランカやインドで受戒するなどして伝統に挑んでいる。
ソンタムカンラヤニー寺院の住職であるタンマナンター比丘尼(74)は、2001年にスリランカに渡って出家し、タイ初の尼僧となった。
タンマナンター比丘尼はそれ以降、4月と12月に同尼僧院で儀式を行い、プーサワンさんのような女性を出家させている。
「(禁止から)90年がたち、社会も変化したのに、まだわれわれは受け入れられない」
寺院の図書館の棚には、宗教における女性の権利と役割に関する本が並ぶ。そこでロイターの取材に答えたタンマナンター比丘尼は、「女性が自分の人生を決めることが許されないのは恥ずべき事だ。正しくないこと対しては抵抗しなくてはならない」と付け加えた。
この尼僧院では、女性を「出家修行者(沙弥尼)」にすることはできても、授戒して比丘尼にすることはできない。授戒の儀式には女性僧侶10人に加え、男性僧侶10人の立ち合いが必要だが、1928年の布告により男性僧侶は立ち合いを禁じられているからだ。
タイには現在、270人の女性僧侶がおり、全員が国外で受戒したと、タンマナンター比丘尼は言う。うち7人が同寺院を拠点としている。対照的に、タイの男性僧侶の数は25万人を超える。
布告を撤回させる試みは、実を結んでいない。タイ仏教僧団(サンガ)最高評議会は、2002年と2014年に正式に布告の継続を決めた。
タイ政府はこの問題について、女性差別ではなく伝統であり、女性は国外で自由に受戒できるとの立場を取っている
「女性はこの国では受戒できない。だが国外で受戒することは誰も止めない。タイ人の僧侶から受戒することができないというだけの話だ」
国家仏教庁の広報担当者は、こう説明した。
(文:Patpicha Tanakasempipat、写真: Athit Perawongmetha)

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